トップページ >

国民新党・下地幹郎幹事長に聞く

8月ごろには新総理誕生か

「総理たる器」は亀井、小沢氏

 

 満を持して出したはずの不信任案は、本会議前の代議士会で退陣表明した菅首相の〝魔球.で、空ぶり三振となった。一度、否決された不信任案を同じ会期に出すことはできない。辞任時期のカードは一人、首相の手にある。こうした白熱する政局展望と国家の骨組みたる憲法問題などを、国民新党の下地幹郎幹事長に聞いた。下地氏は、「8月ごろには新総理が誕生する。実現性は少ないが、『総理たる器』は国民新党党首の亀井静香氏、民主党の小沢一郎氏だ」と明言した。



総理たる器には、決断力や実行力、それに構想力が必要

picture 【プロフィール】しもじ みきお
昭和36年8月14日、沖縄県平良市(現:宮古島市)生まれ。中央学院大学卒業。会社役員を経て、平成7年、自由民主党沖縄県第 1選挙区支部長就任。平成8年、衆議院議員選挙で初当選。沖縄開発政務次官・経済産業大臣政務官就任。平成 17年、自民党離党、「政治団体そうぞう」を結成し代表就任。平成 20年、国民新党に入党。平成 21年、国民新党政調会長に就任。平成 22年、国民新党幹事長に就任、国対委員長・選対本部長兼任。夫人との間に娘1人の3人家族。

――先だって亀井代表は、菅首相の辞任時期に関して「秋口はお遍路には涼しくていい」と、9月以降の辞任を容認したような発言がありました。下地幹事長は6月中に辞任すべきだとの意見でしたが。

下地 僕らが総理から聞いていたのは、「辞任を早くする」ということでしたので、会期末の6月22日までには辞任をするという解釈をしていました。だから、新しい総理大臣で補正予算を組むとか、それが当たり前の政治の姿だろうと思っていたのです。

 しかし、総理の思いは違うみたいです。特例公債も自分できちっとしたい、補正予算も自分で通したい、盆までに全員を仮設住宅に移したい、瓦礫の処理もしたいと、そういう風なことを総理は強く思われていると近頃、私たちは感じています。そうすると、総理は早くお辞めになって、新しい総理の下でがんばるという、私たちの認識と少し違うわけです。

 ある一定の責任を果たした後、管首相が自ら身を引き、新しい総理を迎えるようになるのは、8月ごろまでかかるのかなという思いをしています。

――8月までは認めるということなのですか。

下地 今は、菅総理に対し、誰しもがイエスノーを言えません。菅総理一人が決める権利を持っています。不信任案がないし、問責決議は法的根拠がありません。辞めるか辞めないかというと、菅総理が決める以外にないのです。

――法律論からするとそうですが、しっくりいかない気がします。

下地 法律からすると総理が辞めるのは、不信任案だけです。その不信任のカードを切ってしまいました。歴史にイフはありませんが、あの時、総理がお辞めになるという記者会見を聞いて、「辞める総理に不信任案を出す必要はない」といって不信任案を降ろしておれば、今でも、こんなに長く続けるとは思わなかったとか、急には辞めないというのだったら、もう一回、不信任案だよというカードがあったのですが、もう使ってしまいました。

――バットを振ってみれば、空ぶり三振でした。

下地 今の段階では、使ったことが自民党にとって戦略的に非常に悔やまれます。自分たちの考えていた早急な退陣に追い込めなくなり、総理頼みという形になったわけですから。

――最近、首相の器自体が小さなものになった感じがします。吉田学校の系列からしても、明治の元勲にしても、国家を統括する首相として時代の趨勢を読む大局観や危機認識が、違うような気がします。下地幹事長は、永田町に首相たる器を持った人物は誰だと思いますか。

下地 亀井さんや小沢さんは総理たる器を持った人物だと思います。決断力や実行力、それに構想力、さらに物事に耐える力だとか、そういう風なことからすると、経験的にはこの2人が群を抜いている政治家だと思います。

 ただ、小沢さんの場合は、裁判を抱えていますし、亀井さんは、小党ということですから、総理になるというのは現実的な話ではありません。しかし、政治家としての器量からすると、この二人に勝る政治家はいません。

――下地幹事長が国民新党に入ったのは、亀井さんへの思い入れがあったのですか。

下地 国民新党の出会いというのは、無所属で出てきた私を、亀井さんが国会活動を一緒にやろうと誘っていただきました。それから入って会派を組み、選挙前に一緒になって政権交代をやろうとなって国民新党に入った経緯があります。

 お声がけをいただいたのは亀井代表だったので、魅力のある人だという思いはありました。

 毎日、亀井代表には一日三回、電話しますし、一日一回はお会いします。

――主な話はどういったものですか?

下地 政局や国会の動きがどうなのか、逐次、報告するのが私の務めですから、幹事長として代表に、各党の動きだとか法案の状況だとか、政局観だとか報告させていただいています。

「自衛隊は軍隊」と憲法改正で明記

憲法解釈でできる集団自衛権

――東日本大震災で有事法制が欠落した憲法の問題が浮上しましたが?

下地 憲法は私たちの課題として残っていて、憲法に関して法的整備はできているけど、国会内で委員会ができていません。

 6月上旬、民主党や自民党、みんなの党、たちあがれ日本など超党派の改憲派議員約100人が、「憲法96条改正を目指す議員連盟」を立ち上げています。

 憲法改正の手続きを規定している憲法96条1項は、衆参各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要 とするとあります。

 私も亀井さんもそうなのですが、憲法の重みからいって、その改正が成立するハードルを2分の1から3分の1に変えたりとか、そういう風なことをやって憲法改正すべきなのか疑問視しています。

 憲法の改正はやらなくてはいけません。だが、国民投票率が50%以上で、それの過半数や3分の1といった風なことをやらないと憲法改正が通らないよという論理はおかしいと思います。そのハードルを下げようという人たちが、96条を見直そうとしています。

 私はそういうものじゃないと思います。やはり、国家としてお金をかけて、公告をして、憲法に関するシンポジウムをやりながら、憲法改正を投票をやったとき、50パーセント以上あるべきです。

 そうした手続きを踏んだ上で変えた憲法は重みがあるけれども、国民投票の投票率が20%で憲法改正しましたといい、これが将来の日本の自主憲法ですといっても、はたして国民が納得するんでしょうか。少なくとも私は。あの「憲法96条改正を目指す議員連盟」の会派には参加 しません。

 やはり憲法は重々しくあるべきです。

――ただ現実的には重々しすぎて、改正が難しく、現実的でない部分も不磨の大典のままという問題も一方であると思うのですが、下地幹事長は憲法改正するとすれば、どの部分から手をつけるべきだと思いますか。

下地 はやり「戦力の不保持」や「交戦権の否認」を盛り込んでいる憲法9条の2項です。特に沖縄にいるものとして、平和憲法であるべしという、第1項はそのままにしても、まず自衛隊に関するものは軍隊だと明記して、国の守りをちゃんとやるべきです。また環境に関するものは憲法に載っていません。そういう風な改正や加えていく加憲が大事だと思っています。

――集団自衛権に関してはいかがですか。

下地 集団自衛権というのは当たり前のことだと思います。私は今の憲法解釈でも、できると思っています。

 昨年秋、尖閣で大きな問題があった時、前原外相(当時)はクリントン米国務長官から、「尖閣は日米安保条約の範囲である」という言質を取り付けました。それは中国が尖閣で軍事行動をとった場合には、日本だけでなくて米国も抑止力として参加することを意味します。そうやって中国をけん制したわけです。

 そういうことを考慮すると、自らの領土に他の国が攻めてきた時に、米国が抑止力を行使することをちゃんとやるという以上、公海において米国の艦船が攻撃を受け厳しい立場になった時、日本の自衛隊がそれを支えない、救援しない、そういうことが果たして認められるのかとなると、人道的にも違うと思います。その意味では今の常識的な解釈論の中で、これはできると思っています。

――普天間基地移転問題ですが、レビン米上院軍事委員長は6月中旬、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)を同県名護市辺野古に移設する現行案を見直すよう求める条文が、2012会計年度(11年10月~12年9月)の国防権限法案に盛り込まれるとの見通しを示しています。普天間基地移転問題の抜本的な解決はあるのでしょうか。

普天間基地移転問題は嘉手納統合で

下地 簡単なのは、辺野古をあきらめることです。16年やってできないばかりか、今後の目安さえついていません。そうしたものを後生大事に抱えている非現実的な状況をまず認めて、できませんでしたとやらないと、次のステップには入れません。

――米国のほうでは、嘉手納基地に統合して、嘉手納の一部施設をグアムだとか国内移転したらどうかという意見がでていますが。

下地 それはあたり前のことです。それは私が新嘉手納統合といって、申し上げてきたことでもあります。今の財政状況の中で、辺野古を作ったら7000億円かかります。そしてグアム移転に1兆円、那覇軍港の浦添移設にも3000億円かかるから合計2兆円です。そういう資金を東北の復興資金や景気対策に使わないで、米国の基地を移設するためだけに使うということは、日本の財政事情から、そんなことができる状況にはありません。何の効果も生まないし、理解できないことです。

 これは、バネッタ新国防長官がおっしゃる前に、私どもからこうしたことを言う必要があると思います。

 嘉手納統合だと500億円もかかりません。今でも滑走路があるのですから。

 こういうバーチャルなことを、いつまでもやっていたら、他の脅威国から違う視点で日米がうまくいっていないと見られる懸念があります。そういう意味からして、共同でできないものはできないといったほうが、世界中にいいメッセージを送れると思います。

 できないのを米国の責任だとか、いや日本側の責任だとか相互に責任転嫁するのは、このことのほうが不安定要因を作る懸念があるからです。

世襲制は政治家の小粒化を招く

――東日本大震災を、どう受けとめられますか。

下地 日本は弱かったということです。政治がといったほうがいいかもしれません。対応に遅れがあったことは間違いがないと思います。だからがんばっている日本人と、それに反応できない政治というのが今回出たような気がします。未曾有といいながらも、もっと対応はできたはずだという声が満ち溢れています。

 我慢をしている東北の人たちがいます。我慢強い東北のかたがたでなければ、普通だったら暴動がおきてもおかしくありません。日本の武士道みたいなものがあったのかもしれませんが、近代国家というのがこんなに弱いはずはないと思います。具体的な対策が立てられないとか、プレハブが遅いだとか、原発問題に関しても世界の協力を一挙に得られなかったとか、そこのところは、何だったかなと思います。こうしたことを総括した上で、新しい国づくりを考えないといけないように思います。

――実感として、東北の庶民の強さがあったと思います。略奪がないばかりか、自分自身がひどい災害に遭遇しているし、身内も亡くなっているにもかかわらず、それでもなお人のことを気遣う心が残っていました。それに比べると政治の貧困というのが目だった気がします。

下地 初めの政治家としての器論で、小泉さん以来、1年以内で止めた首相は5人tいます。彼らが総理になる器だったのか、今問われているのではないでしょうか。それと同時に、菅首相が辞められた後、名前があがっている方々が、力量も経験も含めて、本当に総理の器の人たちなのかという思いもあります。

 副大臣クラスではないかという人もいるほどです。総理というのは、誰でも手を上げたらできるものなのでしょうか。経験を積まないで、財務大臣や外務大臣を一回、やった程度で、できる程度のものなのでしょうか。

 総理を支える周りのスタッフの体制も大事です。誰がきても国家を支えるという、それもできていない気がします。

――政治家の小粒化というのは、深刻な問題だと思います。

下地 世襲の議員と官僚上がりの議員がものすごく多くなっていることも、一つの要因なのかと思います。

 資産として看板や地盤を受けついでいる世襲というのは大きな問題です。世襲制は止めるべきです。お父さんがいた選挙地盤から出れないようにするとか、具体的には選挙を変える必要があります。本当に優秀な人だったら、それでも当選するわけですから、そういう風にしないとだめだと思います。

ミキオブログ
http://www.mikio.gr.jp/blog/index.php

この記事のトップへ戻る