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沖縄地場金融リポート第四弾 本誌編集部特別取材班

「金融円滑化法が切れる 来年4月から混乱か」

沖縄地場銀行が脅しに似た威圧

 わが国の金融は高い流動性がある一方、貸し渋り問題が起きている。銀行はローンを出して不良債権になるのが怖くて、腰が引けてる現状があるのだ。

 元来、金融と経済というのは、卵と鶏との関係に似ている。銀行は経済成長してくれればローンを出せると言うし、企業はローンを出してくれないと成長できないと言う。

 だが経済に本当の活力を付与するには、弱いところにてこ入れをする必要がある。弱いところというのは耐久性が乏しく、ちょっとした景気の悪化であっという間に、崩壊の憂き目を見るリスクが高い。その意味では日本で最も弱い沖縄経済こそ力をつけないといけない課題でもある。それは単に一部地域としての沖縄だけにとどまらず、日本全体の経済にも影響してくる事柄だからだ。

排除すべき銀行の我欲

 世界経済は現在、二〇〇八年のリーマンショックによる金融危機で世界不況に陥った二番底を伺うような構造的不況に陥ろうとしている現実がある。世界の株価が下がり、ドル安円高基調が続いてもいる。

 欧州の金融機関の経営危機と、ギリシャやスペインなど国家財政の破綻危機が継続中だ。特に日本は輸出企業、金融機関の株価下落が顕著となっている。

 政治も衆・参ねじれ現象は変わらず、ダイナミックな政治の局面打開の手を期待できる状況にはない。

 外的な条件が悪い中、何とか沖縄経済を上昇気流に乗せないといけない。失業率で日本一高い沖縄経済は、最も弱い日本のわき腹のようなものだ。

 そのわき腹が痛んで、走り出そうにも走れないような状況だ。その最大の腹痛の原因が、銀行の我欲にある。

 本来、金融機関というは、経済の「血液」だ。各組織に酸素と栄養を運び入れ、老廃物を運び出す血流は、流れてこそ意味がある。だが、現状の沖縄の地場金融機関は、企業が求める金融の蛇口を意図的に閉めている側面がある。新しく起業したくても融資が受けられないばかりか、「貸しはがし」行まで横行している。

 これは、今春、改めて延長が決まった金融円滑化法案にもある通り、銀行が決してやってはいけないという金融庁からの通達があるにも拘らず、いまだに全国的に行われている違反行為である。しかも、それが沖縄で一番多い。

 企業は約定通り返済できなければ、延滞した債務には大体、年率14%前後の利息が加算される。放っておくと、あっという間に雪だるま方式で債務が膨れ上がり、身動きを封じられる運命にある。

 今はそれでも、延長された金融円滑化法で守られている中小企業が多い。だが、この金融円滑化法も両刃の剣だ。いわゆる同法が適用されなくなる来年4月以後、急速に中小企業にとっての金融環境が激変し、厳しい経営環境に立たされないとも限らないからだ。

 先だっても那覇の中小企業経営者から「延長された金融円滑化法は来年3月までだ。4月からは嵐が始まるぞ」と、脅しにもとれるような乱暴な言葉を地場銀行から言われたとの苦情を聞いた。

銀行名を出せとの声も

 本来、銀行のあり方は、金利の高さで客から預金を集め、それを収益力のある企業や新規ビジネスに貸し付けて利ざやを稼ぐのが正道のはずだ。だが、近年の沖縄の金融機関は、そうした本来の立場から逸脱し、M&Aの仕掛け人になっているケースが目立つ。

 金融機関は、本来はサービス業だ。それが地域産業育成のバンカー精神を失い、舞い上がって、利益優先主義に走るようなら銀行の看板を下ろし、「マチキン」の看板にすげ替えるべきだ。

 確かに安易な救済措置は、モラルハザードを起こしてしまうリスクがあるのは事実で、注意を要する。だが、中小企業をただ、切り捨てるだけでは何の意味も無い。銀行はバンカー精神を発揮して、地場産業をじっくり育てる大切さを忘れてはならない。

 地場銀行の金利が高いという陳情や、貸しはがし防止の陳情や署名運動も熱を帯びつつある中、これまで本誌は4回にわたって、こうした沖縄地場金融の問題点をリポートしてきた。

 創刊81年目を迎えた本誌の読者からは、激励の電話やファックスが多数寄せられた。その中には、今まで匿名扱いにしてきた金融機関の実名を出せ、という声も上がっている。

次号は現地取材へ

 沖縄金融第5弾では現地に飛び、現地の声を改めて聞く予定だ。

 なお金融庁は、沖縄の金融特例の見直しを考慮中だ。特例はこれまで有効期間が三年の期限ごとに延長を繰り返し、今に至っているものだ。

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