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巻頭インタビュー 後藤田正純衆議院議員に聞く

保守のみが経済をリードできる

弱者にも新たな光、投げかける

 徳島は近代と歴史が共存している面白い地域だ。日本経済を牽引する先端企業が軒を連ねている反面、神話の世界も同居している。その神話の地域をルーツとする後藤田家の末裔であることを誇りとしている後藤田正純衆議院議員に聞いた。保守こそが〝経済〟をリードできるし、〝弱者〟に新たな光を当てることができると言う。



──「選挙区」(徳島三区)は、どのようなところですか?

 日本の縮図。

 まさしく日本の縮図なんですね、我が徳島は。

 都市型の様相を呈している部分あり、第一次産業、それも農(業)と水(産業)がきわめて盛ん。畜産あり、酪農あり。その一方で、過疎化の地帯もあり、高齢化も進行している。独居老人だっていらっしゃる。翻って、日本の先端企業がある。日亜化学(工業)、大塚製薬、ジャストシステム。こんな、それぞれの業界だけでなく、世界に冠たるリーディングカンパニーが、我が徳島で創業し、ここで稼働しています。こうやって俯瞰(ふかん)してみると、今の日本の縮図そのものでしょう? これが徳島の特徴なんです。

 それとですね、これはあまり知られていませんが、徳島は、医者が多いのです。“石を投げれば、医師に当たる”というくらいに、ですね(笑)。この要因は判りませんが、何を隠そう、私の父もまた兄も、祖父も医師なのですね。徳島の“性”ですかね、私はごらんの通り、政治家ですが(笑)。

 また、徳島は、これもあまり知られていないことですが、貯蓄率が高いのですね。私の記憶では、東京に次いで二番目、だったんじゃないかな。

 まあ、このように徳島というところは、いろいろ知られざる点も含めて、とても興味深いところなのですよ。私自身、「選挙区」でありながら、いつも新しい発見があり、興味をそそらせてくれる、というか、知的探求心を喚起してくれる、そんな地域なんですね、徳島っていうのは。そういう意味では知れば知るほど、もっと知りたくなるというかね、実に面白い地域なんですね。

──日本の縮図、徳島のなかでも「選挙区」は、また、さらに…。

 そう!、面白く、興味深いところなんですよ、それが。

 具体的には、県庁所在地(徳島市)の南西にあたる地域ですね。阿南市、吉野川市、美馬市、那賀町、牟岐町などがあります。

 この地域は、歴史的にも大変興味深い神話の地域なんですね。一説では、天照大神とも深い関係があると言われているのです。

 ちなみに後藤田の家というのは、こうした神話の地域をルーツとする忌部(いべ)族から分かれたと言われておりましてね、私の父で十七代目だそうです。私は兄がいますから、(後藤田家)十八代目ではありませんが、それでも徳島、阿波の国のルーツを構成するところの末(裔)にいさせてもらっているのです。私にはやはり、徳島の“血”がしっかり流れているのですよ。

 後藤田家というのは、我が「選挙区」の美郷村(みさとそん 旧麻植郡美郷村現吉野川市)というところの出なんです。その美郷村に後藤田正晴の記念像が建立され、その除幕式がこの11月7日に行われるのです(※ インタビューは、10月15日に行われた)。

 また、選挙区の南の方に目を向ければ、日和佐というところがあるんですが、ここがトライアスロンの会場となっているんです。それで私は、徳島のトライアスロン協会の会長も務めさせてもらっているんですよ。私は(トライアスロンには)出ませんがね(笑)、毎年、スターターとして参加させてもらっています。

 トライアスロンができる地域というのは、つまりは、海あり、山あり、自然が揃っていなくてはできないわけで、日和佐はその自然が見事に調和されている地域なんですね。

 山といえば、「選挙区」には、それこそ非常に有名な山があるんです。剣山(つるぎさん)がそれですが、以前、この山の偉容に惚れ込んだある海外の富豪が、一山丸ごと欲しい、と言ってわざわざ買いに来たことがあるくらいです。いや、私のところに(買いに来たわけ)ではなく(笑)、徳島に来たのですが…。まあ、そんなエピソードが尽きないのは、やっぱり「選挙区」のたぐいまれなる自然の素晴らしさがなせるところだと思いますね。

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──山あり、海あり、自然の情景には尽きませんね。日本の縮図と仰いましたが、それら情景は、日本の原風景とでもいうようなイメージですね。そんな「選挙区」での、特産品やお奨めの食べ物など、ご紹介ください。

 これがまたたくさんあって、まあ枚挙にいとまがないと言うべきでしょうか(笑)。

 まず第一に、何といっても、すだち、ですね。徳島と言ったらすだち、すだちと言ったら徳島。もう説明はいらないでしょう。

 それから、とにかく何でも旨いんだけれど、一粒ウン百円というイチゴがあるんですよ、イチゴ。「ももいちご」という品種なんですが、これがまた大粒でね、他のイチゴには見られないような大変なイチゴなんです(笑)。家内なども秘かにPRしてましてね(※PR用ポスターもある)。しかし、これは冗談抜きで本当においしい。何とか全国区のブランドとして定着させていきたいと思っています。

 それから、これはもう全国区ですね、鳴門金時(サツマイモ)。これもすだち同様説明の要はないでしょう。それから、しいたけなどは今や群馬県を抜いて、我が徳島が生産量ナンバーワンになったはずです。

 それからね、これもあの名古屋コーチンを抜いて、地鶏生産ナンバーワンになった、「阿波尾鶏(あわおどり)」という地鶏ですね。これがまた旨いんです。何だか旨いものばかりだな(笑)。

──こと特産品については、選(よ)り取り見取りといった風情ですね。ところで、議員お奨めの隠れた観光スポットなど教えていただけませんか?

 あまりにいいところなんで教えたくないんだけどな(笑)、冗談はさておき、我が「選挙区」には“滝”が多いんですよ。これがまた、知られていない滝が多いのです。山に向かって結構な距離を歩きますでしょ、そうしたら必ずそんな滝にぶつかる。わたしは、何というか、もの思いにふけりたいときや、心を癒したいときなんかは、一人でそんな滝を目指すんです。いいものですよ、マイナスイオンにどっぷりと浸かることができて…。実に清々しい思いに浸(ひた)ることができる。清涼なる滝を一人独占しているんです。何というか、隠されたパワースポットとでも言うべきでしょうかね、“MY滝”なんて、実に贅沢でしょ? こんなところは、そうそうありませんよ。

 そんな滝は、那賀川上流などに点在しています。

──「選挙区」が抱える悩みについて、語っていただけるでしょうか。

 やはり過疎化、高齢化は大きな悩みですね。これはもう避けては通れない悩みです。しかし、これを悩んでばかりいても、ことは解決に至らない。

 私は地方の役割というべきか、その点にもっと注目しなければいけないと思っているんです。例えば農産物、水産物、これらの収穫(あるいは収獲)の担い手は、地方ですね。都会で暮らす人々は、その点を度外視して、ただただ安いものを購入しようとする。これでは、資源の担い手は育たない。育たないばかりか、高齢化だけが進行し、やがては、その担い手の地域は過疎化してしまう。この悪循環を繰り返しているのが、今の日本だと思うのです。

 これでは、いつまで経っても悩みは消えないばかりか、より一層深刻化してしまいます。

 そうならないためにも、貴重な資源に基づくものを少しだけでも高く買おうよ、と。それは引いては、地方の資源供給の担い手を守ることになるのです。さらに高齢化や過疎化の歯止めにもなるはずです。

 地方は、都会に“人材”を派遣している、こう考えると、都会への人材流出の問題も、また違った観点で捉えることができるはずです。これはいわば都会と地方との絆を守る、ということに行き着く。考え方をちょっと転換させることで悩みもまた、よりよい解決法に行き当たるはずです。

 スイスなどは、概してパンがまずいと言われているそうです。これは何故か。これは、一見、マイナスイメージにしか映らないのですが、見方の転換で実はそうじゃないことが判ってくるのです。

 スイスのパンがまずいのは、一般的に備蓄された小麦粉を使っているからなんだそうです。小麦粉だってやっぱり穫れたて新鮮なのがいいようで、倉庫に備蓄されたものを使ったパンはまずいのだそうです。しかし、これはスイスの人の知恵、すなわち、生産者を守る上で採らなければならない措置なのです。小麦粉を備蓄させることで、生産品の無駄遣いをなくす、つまりは生産者を守る、ということに繋がっていくのです。長い目で見れば、これは、その地方を守る、例えば高齢化や過疎化を生産者を守ることで解消していく、ということに繋がるわけです。

 一見、迂遠な方法論のように見えますが、私は拙速に安いものばかりを追求して、やがては生産者の生活を脅かしてしまうようなやり方は、間違いだと思うのです。スイスを見習え、というのではありませんが、ここは都会、消費者と地方、生産者との絆を壊してしまうような在り方をもう一回、見直す必要があるのではないかと思うのですね。

 我が「選挙区」には、それこそ誇るべき生産品がたくさんあります。人材だって多くを都会に“派遣”しています。しかし、それを今のような『安物買いの銭失い』的な消費を続けて、先細りするようなことにしては台無しです。

 高齢化や過疎化だけでなく、農業や漁業の担い手の生活を壊していくような在り方を変えていく。それをまず、私の「選挙区」からやっていきたいですね。また、同じような悩みを持っている選挙区は日本には多いはずです。この変革は必要です。

──悩みを解消するのは、やはり大変なパワーが求められますね。最後に政治家として何をしたいのか、それをお聞かせください。

 誤解を恐れずに敢えて言わせてもらえば、この世の中において“格差”なるものをなくす、というのは、これは無理な話だと思うのです。

 しかしですね、格差の陰になって光の当たらない人々がいる。そんな人達に、光を投げかける、光を当てる、それが政治家の役目だと思うのです。もう少し平たく言えば、様々な意味での“弱者”の光を当てる、これは政治家しかできないことです。

 私はこれをするために、この「選挙区」から政治家を目指し、立った。

 もうひとつ付け加えさせてください。光を当てるのは、もうひとつ、それは“経済”です。経済政策こそ日本を牽引するものです。ここにも、きちんと光を与えなければいけない。税の在り方をもう一回、見直す。税の再分配についてとことんまで議論する。

 政治家としてこれまで当たっていないところに光を投げかける。格差に隠されていた陰の部分に光を当てられ得るのは、やっぱり政治家しかいないのです。

 最後に言わせてください。私は保守にこだわる理由があるのです。保守というのは、あるものをよりよく変えていく、そんな政治をすることです。

 翻って革新というのは、既存のものを壊す、それだけですね。今の民主党だって、まさにそれです。私の保守のこだわりは、畢竟、先にお話しした“弱者”に光を当てる、“経済”に光を当てる、これを成すことができるのは、やはり保守しかないのですね。

──お忙しいところ、ありがとうございました。

【プロフィール】ごとうだ まさずみ1969 年8月5日生れ。妻は女優の水野真紀。警察庁長官、内閣官房長官、法務大臣を歴任した後藤田正晴は大叔父。慶應義塾大学商学部卒。三菱商事に入社。衆議院議員秘書を経て自由民主党所属衆議院議員。自由民主党徳島県連会長。 ホームページhttp://www.gotoda.com/ 

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