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今月の永田町

衆院解散への攻防激化 3月・6月危機説が浮上

着々と中国包囲網形成へ TPP交渉では国益主張を

 総額12兆1025億円の今年度第3次補正予算の成立(11・21)を受けて、野田佳彦首相は消費税率の引き上げを含む増税法案づくりに乗り出した。これに対して野党の自民、公明両党は、衆議院解散・総選挙に追い込む戦術を強化している。野田首相としてはあくまでも任期満了まで続行したいとしている。しかし、野党側の攻勢はさらに強まる見通しで、平成24年は総選挙に突入する可能性が極めて濃厚であり、来年1月開幕の通常国会冒頭から与野党の攻防は激化しよう。

 「3次補正成立をもって自民党の協力は終わる」。自民党の赤石清美氏が11月21日の参院予算委員会で野田政権との協力関係の終了を宣言した。「復旧・復興のため」を大義に政権に力を貸してきたが、本格復興のための3次補正予算の成立の後は対決姿勢に転じることを表明したものでもある。自民党執行部も、これまで震災復興には協力するが、その後は戦いに転じると繰り返し明言してきた。

 確かにその後の自民、公明の対決姿勢は厳しい。

 初の党首対決となった11月30日の党首討論で自民党の谷垣禎一総裁は、野田首相に対して前沖縄防衛局長の米軍普天間飛行場移設問題を巡る不適切発言や政府の消費増税方針を取り上げ、「首相は信を問うべきだ」と衆院解散を強く求めた。

 公明党も、沖縄防衛局長が不適切発言で更迭されたことを受け、「トップの緊張感のなさについて、責任が問われる。問責とか、そういう問題に発展していくと思う」と述べ、一川保夫防衛相に対する問責決議案を提出する考えを示している。自民党も賛成する方針だ。

 仮に問責が決議された場合には、国会審議がすべてストップすることになり、野田政権は厳しい国会運営を迫られることになる。

 さらに、自民、公明両党は山岡賢次消費者担当相に対する問責決議案を参議院に提出する構えも見せている。

 その他の閣僚への問責も視野に入れながら対決色を強めており、問責決議の連発により国会が空転することもあり得よう。

 それだけではない。自民党はさらに、野田首相に対する問責決議案の提出も最後の切り札として検討中だ。衆院では内閣不信任案を提出しても、民主党が多数を確保しているため否決されてしまう。そこで、自民党は参院を舞台に公明党と協力して首相への問責決議案を提出すれば、可決してしまう可能性が大きいのだ。問責の理由はいろいろ付く。例えば、環太平洋連携協定(TPP)問題や普天間移設の停滞などだ。

 公明党も次期衆院選対策を着々と進めている。小選挙区の候補者名簿に、前回落選した太田昭宏代表と北側一雄幹事長(肩書きはいずれも当時)や引退したはずの冬柴鉄三元幹事長まで復帰させ、名簿登載した。これほど早い候補者発表も異例である。

 そして、これらの候補者の復活が意味するものは、「公明党が自民党との距離感を再び詰めて第二自民党化に向かう」(政界関係者)ものなのだ。

 「一時、公明党は民主党に接近して、政府の政策立案に影響を与え独自性を印象づけようとしていたが、もはやそれはなくなった」と語る先の政界関係者は、さらに「衆院の任期満了となる平成25年夏は参院選だけでなく、東京都議選もあるのでトリプル選挙になってしまう。公明党はそれだけは絶対に避けたいはずだ」と続ける。

 この公明党の事情を選挙支援を受けている自民党は配慮せざるを得まい。そうなると、通常国会での攻防が最大の焦点となってくるのは必然である。すでに浮上しているのが野田政権にとっての3月危機説と6月危機説だ。それは野田首相が描く政権運営のシナリオと裏腹の関係にあるともいえる。

 野田首相のシナリオとは、年末までに税率の引き上げ幅や増税時期に関する「社会保障・税一体改革大綱」をまとめ、来年3月に消費税率引き上げの関連法案を閣議決定して通常国会に提出するものだ。来年度予算案は民主党が衆院で多数のため成立するが、野党は参院での「多数」を使って予算関連法案をストップさせる可能性がある。菅政権の時と同様だ。

 そこで出てくるのが3月危機説である。関連法案が成立しなければ予算執行ができない。

 加えて消費税増税法案も野党の反対で進まなければ内閣不信任の声が強まるのはこれまでも同じだ。その時、それらを理由に参院で首相への問責決議案を成立させれば国会が動かなくなる。

 その時、民主党内はどう動くのか。なかでも小沢元代表は「消費税増税を強行するなら、(首相の)党運営は厳しくなる」と語っているため、足元が揺れ動き、政権がもたなくなり、衆院解散に至る可能性が出てくるのである。

 もう一つの6月危機説は、首相が来年6月の通常国会会期末に衆院を解散する約束を自民、公明両党とする代わりに、両党から消費税増税案への賛成を得る、という「話し合い解散」のことである。自民党の石原伸晃幹事長は11月22日、消費増税法案への対応について「野田首相と谷垣自民党総裁、山口公明党代表の3人で話し合い、法案を通して選挙ということもあるかもしれない」と述べた。

 ただ、民主党内には「いくら話し合い解散といっても消費税増税を掲げて選挙は勝てない」との声も多く、現状では「あくまでも任期満了を」という基本路線だ。

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