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インタビュー 国務大臣郵政民営化・防災担当下地幹郎氏に聞く

モラトリアム法延長が筋 対中国、まずは外交が肝要

picture 【プロフィール】しもじ みきお 昭和36年8月14日、沖縄県平良市(現:宮古島市)生まれ。父親は、沖縄県平良市長を務めた下地米一氏。沖縄県立宮古高等学校、中央学院大学商学部商学科卒業。会社役員を経て、平成7年、自由民主党沖縄県第1選挙区支部長就任。平成8年、衆議院議員選挙で初当選。沖縄開発政務次官・経済産業大臣政務官就任。平成17年、自民党離党、「政治団体そうぞう」を結成し代表就任。平成20年、国民新党に入党。平成21年、国民新党政調会長。平成22年、国民新党幹事長。平成24年、郵政民営化担当大臣兼内閣府特命担当大臣(防災担当)。夫人との間に娘1人の三人家族。 ホームページ:http://www.mikio.gr.jp/index.html

 政権与党として民主党と連立を組んだ国民新党の三年間を、郵政民営化担当相の下地幹郎氏に振り返ってもらった。下地氏は今の日本の課題を、小泉元首相の新自由主義導入で陥った格差社会の補正にあり、時代の潮流を「大きな政府」と読む。モラトリアム法の延長を訴えるとともに、憲法にも言及し「戦争の放棄と戦力及び交戦権の否認」を謳った第9条改正の必要性も強調した。


―─民主党と連立を組んだ3年間の総括は?下地 小泉さんはよく「郵政が通れば、経済もよくなる、生活も向上する。日本はよくなる」と、おっしゃっていたけれども、結果として競争原理社会ができあがった。小泉さんが導入した新自由主義経済で何が起こったかというと、所得格差に地域間格差、大企業と中小企業、零細企業との格差が起こった。

 格差が起こって、どういう後遺症が出てきたかというと、生活保護の予算が年間3兆円を超えるほどになった。2つ目には自殺者の数、しかも経済的理由の人が増えた。いずれも生活困窮者が増えたためだ。

 経済は上だけ伸びても、下がその恩恵にあずかれないまま、置いてきぼりをくらう構造になって、経済が相対的に明るくならなくなっている。

 それをどうするか。会社の経営状況がよくなるというのは、今の経営環境からすると考えることができない状況にあるわけで、会社が従業員の給料を上げるとかというのは難しい。そこで経済政策を打ちながら、新しいことをやっていこうとしている。

 その間にしてきたのが、子供手当てであったり、高校授業料の無料化であったり、奨学金の拡充であったりと子供に視点をあてながら、親の負担を減らして生活が出来る環境を作っていくというような作業をやってきた。

 それが道半ばだ。

 ただ自殺者は今年、3万人から2万7000人へと下がる。生活保護の話も、これから見直しをしていかないといけない。

 これから社会保障と税の一体改革をやることで、安心できる社会を構築し、経済がよくなるというスキームを作っていかないといけない。

 こうした対策を打っているのが、今の現状だ。

 だから何もやっていないとか、進んでいないとか、そういうものではない。

 沖縄の問題で象徴的に言われるのは、鳩山さんの話だ。だが、鳩山さんの話は、前の自民党がやっていた話と同じ。普天間飛行場の辺野古移設が出来なかったら、グアム移転もやらない、土地も返さないと、パッケージになっていると思っていた。これが大きい。

 それが辺野古移設で、返せるものは返すよといったことを考えると基地問題も一歩前進したと総括できる。

 島嶼防衛というものも、自民党はやらなかったけれど、日本最西端にある与那国に陸上自衛隊の部隊を配備し、一歩前進した。

 そうすると、そんなにやってないということではない。

 ただ、現政権はアピールが下手だ。それに罠にひっかかった。

 3党合意といって、その合意を重んじると、修正しないといけなくなる。修正したら、ほらお前ら、変えただろうとなる。自分が修正しろと言っていて、変えた途端、そうなるからどうしようもない。

 それが今の現状を作っていると思う。

――島嶼防衛が重要になっていますが、中国の脅威が前面に出てくるようになった。その中国にはどう対処すべきか?

 中国との対立関係は持つべきではない。

 中国が尖閣においても安全保障問題においても、過度に主張しすぎないようにするための外交努力をやる必要がある。その意味では中国脅威論を煽るよりは、中国が積極的に世界平和構築に加担し、平和的台頭を促すような体制を作っていくことが大事になる。

 しかし、二点目には、自らの国は自らが守る。これが基本じゃないといけない。その次に日米同盟だ。あくまで自国防衛が先にあり、日米同盟の後にくるものではない。

 そのことをやるために、島嶼防衛であったり、部隊の再編であったり、基地の整備であったりと、こういうものを整えていかないといけない。

 中国に対しては、一番が抑止力でも軍事力でもない。まず外交が肝要となる。

 それから、中国を対象にするわけではないが、自らの国は自らが守れるような体制つくりをしていく必要がある、というのが基本だ。

――憲法改正は?

 しないといけない。

――眼目は?

 矛盾があるところは改正が必要だ。一番大事なのは憲法第9条の改正となる。軍隊は軍隊として認める。ただ平和憲法の原点は残しておく。

 また教育が憲法の中に書かれていないから、これを明確にしていく必要がある。

 現憲法に欠落している条文を加える「加憲」として、環境権を加えていくことも大事だ。

――国民新党は今回、いじめ問題を出した。国民新党としては、教育問題をこれから政策の柱にすえるつもりか。

 そうだ。それを形にしていこうと思っている。

――2012年は政治的変革の年となった。大統領選挙など、台湾を皮切りにフランス、ロシア、米国、中国、韓国と日本をとりまく国家の首脳が入れ替わったり再選したりと選挙の年だった。日本まで総選挙となったが、一年を回顧してどういう年と総括するか?

 4年前も同じだった。このときもオバマ大統領が誕生し、フランスも変わり、イギリスも変わった。同じ政権交代の時期になった。政治が激動している流れは、そのまま続いている。その流動化が終わったわけではない。まだまだ続く可能性がある。世界の政治は過渡期を迎えていて、何も日本だけではない。これはそういう風に見ないといけない。

 オバマ大統領だって厳しい選挙になったのは、米議会はねじれになった。米も流動化の中にあるということだ。流動化というのは自分が訴えた政策が、変えられる可能性があるということだ。

 そういう政治状況がしばらく続くと見るべきだ。

――時代的な潮流とすれば、小さな政府ではなく、大きな政府という政治の流れが出ている。

 日本全体、世界全体の景気が悪いときに、だれがこの国をサポートするかというと政府しかいない。政府が腰を上げることが大事だ。みんな失業者がいなくなって、みんな高所得者なるような雰囲気だったら政府はいらない。

 経済が小さくなってきて、社会的にもいろいろひずみが生じている。大きな政府を作って、こうしたひずみを修正しないと自殺者は増えるばかりだ。

 維新の会は競争原理を持ち込んだら、経済はよくなるというけれど、新自由経済では必ず負け組が多く出る。

 小選挙区の戦いは、10人出て1人しか通らない。経済界もみんなが伸びるわけではない。

 そうなってきた場合、これを修復して新しい産業を起こすまでに、時間がかかる。

 国内が厳しい状態にある今、大きな政府を作っていくというのは当たり前の政策だ。

――モラトリアム法が2013年3月で期限が切れる。中小企業にとっては厳しい環境となる。

 モアトリアム法の延長が必要だ。今は追い貸しするのではなくて、違う形にしていかないといけない。

――日経新聞に掲載された「交遊抄」(2012年8月27日付)には、山中貞則氏に師事したことが書かれている。

 故山中貞則先生は、晩年に脳梗塞を患ってから毎年、冬はリハビリがてら暖かい沖縄の海で舟釣りをするのが日課だった。毎日8時間、先生の隣に座って黙々と先生のさおの針に餌をつける冬が10年間続いた。

 はじめの3年間は、まともに言葉をかけられることもなかった。4年目のある朝、先生が約束の時間より30分前に出港してしまい、私は別の船を調達して西表あたりで追いついた。「おお、よく来たな。時間に遅れるなよ」と。私が遅れたわけではないのに、初めて普通に声をかけられたことが何ともうれしかった思い出がある。

 山中先生は沖縄を愛された政治家だった。そうした山中先生はじめ諸先生方の沖縄を愛する心情と日本を愛する真情を共にしていきたいと思う。

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