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株価上昇に浮かれてる暇はないぞ、安倍政権

 当面、「経済再生」を最大課題とする安倍政権にとって、米国の景気後退が一応遠のいた安心感も加わって堅調に上昇気流をつかんだかのような株価動向が追い風となっている。

 日銀に命令同然で2%のインフレ目標を掲げて金融緩和を促し、防災を理由に公共事業のタガを緩める。金融と財政で当座をしのぐ間に規制緩和などで企業の投資を誘い、デフレを脱却する。大胆な金融緩和と機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略、この三本の矢がアベノミクスだ。

 ただ経済は生きものだ。まず緊急事態をバネにしてうまく始動したかに見えるアベノミクスにも懸念がなくはない。三本の矢にしても融合して良好な作用を生む場合もあるが、副作用が続くと大変なことになる。最も大きなリスクは日本国債の金利が跳ね上がることだ。

 自民党には7月21日が濃厚となりつつある参院選に向け、企業団体献金の拡大や集票力強化の思惑が働いている。

 この流れを加速させるべく、国会議員からは公共事業の上積みを求める大合唱が起き、党本部には業界や自治体の陳情団が列をなしている。一方で、財政悪化への懸念から「古い自民党の復活と見られかねない」と自重を促す声も上がる。高村正彦副総裁も「景気がよくなり税収が増えたからといって、もっと公共事業をやろうというのはとんでもない」と公共事業の乱発に釘を刺す。国交部会では「ばらまきの印象を与えると参院選に悪い影響が出る」との声が上がった。

 しかし緊急経済対策からは三本の矢のうちの「成長戦略」だけはまだ霧の中だ。民主党政権は自然エネルギー、医療、農林漁業を重点分野に置いたが、安倍内閣ではまだ重点分野が決まっていない。今後、経済再生本部のもとに置かれる産業競争力会議で議論し、6月までにまとめる。公共事業のばらまきをジャンプボードにして、うまく成長戦略に移行できるかがポイントとなる。

 何より国民が好調な経済を実感できるのは、手にするサラリーが上昇する場合だ。円安で輸出企業に追い風が吹いても、庶民とすれば割高な輸入物品となり生活は苦しいばかりだ。

 そのサラリーが上昇するかとなると、かなり困難だといわざるを得ないのが現状だ。

 そもそもデフレ経済は、四半世紀前のベルリンの壁が崩壊し、冷戦終結による社会主義国家の労働力が世界経済とリンクしたことによる。それまで存在した世界の東側と西側で溝が埋まったことで、東側社会の格安の労働と世界経済がリンクすることになったのだ。

 そうした構造変化によるデフレ経済の深層をみると、国民レベルでサラリーの上昇をもたらすというのは簡単なことではない。

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