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7月参院選大胆予測 自民、公明で過半数確保 野党は壊滅的敗北へ

衆参ねじれ解消 強まる安倍氏の主導力 長期政権の足場固めへ

 第2次安倍政権発足後、初の国政選挙となる第23回参議院選挙が7月21日投開票される見通しだ。最大の焦点は、参院で少数与党の自民、公明両党が過半数を獲得して衆参ねじれの解消を果たすか、野党側がそれを阻止するかだ。さまざまな情報を総合して選挙結果を大胆予測すると、自民は急伸し公明と合わせて過半数を確保する一方、民主、日本維新の会、みんなの党などの野党は壊滅的敗北を喫することになる。そのため、参院選挙後の国会運営は安倍晋三首相の主導力がさらに強化され、長期政権の足場を固めていくことになろう。


 3年ごとに実施される参院選は、総定数(242)の半数の121が改選数となる。そのうち、選挙区選挙では73人、比例代表では48人が当選する。自民、公明の非改選数はそれぞれ、49、9で合計58議席が国会に残るため、両党で過半数(122)を確保するには、122─58の64議席が必要となる。

 「自民党は、選挙区で22 しか獲れなかった6年前の惨敗の反省から、押せ押せムードではあっても選挙区は慎重に、比例代表は積極的に候補者擁立を図っている」と語るのは自民党幹部だ。比例代表の12議席と合わせて34議席しか獲得できなかった前々回選挙をはるかに上回ると見られる今回の選挙だが、確かに選挙区選挙に対しては慎重さがうかがえる。

 自民党は今回、全体で47ある選挙区(1人区は31)に49人を擁立した。2人区以上の複数区では、共倒れを警戒して東京、千葉に2人立てた以外は公認候補を1人に限定した。その一方で、比例代表には31人を擁立したのだ。

 「過去の選挙で比例代表票を取り過ぎて候補者が全員当選してもまだ名前が足りなかったことがある。今回は、上積み分として『Kー1』格闘家の佐竹雅昭、大手芸能事務所に所属しインターネット選挙を駆使して戦うタレントの伊藤洋介、日本放射線技師連盟理事の畦元将吾、ドッグトレーナーの田辺久人、大日本猟友会会長の佐々木洋平を名簿登載し、集票力をアップさせている。31人全員当選もあり得る」と先の同党幹部は続ける。

 もちろん、そこまで強気になるには理由がある。マスコミ各社が5月中下旬時点で行った世論調査によると、自民党支持率がすべての調査で共通して高い数字が出ているからだ。

 例えば、朝日新聞が5月18、19日に実施した全国定例世論調査によると、安倍内閣の支持率が最高だった3月と並び65%に上昇。参院選の比例代表投票先については、自民党が49%と極めて高い。このところの国政選挙では投票日の直前になっても投票先を決めていない無党派層の動向が結果を左右することが多かったが、およそ2分の1の人が自民党に投票するとの明確な意思表示をしているのである。

 共同通信が同じ日に行った全国電話世論調査では、安倍内閣支持率は70・9%と高率を維持し、比例代表の投票先でも自民が1位で前月より1・9ポイント増の44・4%。政党支持率では、前回より4・4ポイント増の48・5%という結果が出た。両者に共通しているのは、支持率が政権、自民ともに高い一方で、日本維新の会が後退し、他の野党の低落傾向が続いていることだ。

 最近の自民党の比例代表当選者は12人。平成以降でも20議席がやっとだった。仮に、比例代表31人が全員当選し、選挙区でも大勝して43人以上が当選して計74議席以上を獲得すると、衆参両院で自民党が単独過半数を確保することになり、国会運営のやり方にも影響が出よう。いずれにせよ、自民党としては民主党政権があまりにひどかった反動もあるだろうが、成長戦略、骨太方針、規制改革など経済再生の方向性をしっかり示し、まずは国民に生活向上・安定を実感してもらうことが勝利への方程式となろう。

 与党・公明党にも余裕がうかがえる。

 公明党は、現有19議席のうち、10議席が改選だ。選挙区4人、比例代表7人の候補者を決定し、9議席の当選は固い。最重点区の埼玉選挙区(改選3人)では、自民、民主、みんなの党から現職が出馬するため危機感を強めた公明党が、すでに公認決定済みの自民に推薦を要請、自民埼玉県連内の反発や異論を抑えて党本部がこれを決定した。自民党としては異例の決断だが、勝敗を決する31の1人区で、公明党の全面的協力を得るためで、自公の関係強化は進んだ。こうしたことから、自民、公明の過半数確保は確実である。

 余裕のもう一つの理由は、日本維新の会が失速したことだ。自民党が参院選後に描いていたシナリオの一つは、自民、維新、みんな3党による改憲勢力が3分の2(162議席)を獲得し、公明党を外してでも一気に改憲になだれ込んでいくというもの。しかし、そのシナリオはなくなった。

 公明党は改憲勢力の連携を阻むため、参院選共通公約を作成しようと自民に呼び掛けていたが、山口那津男公明代表は安倍首相との党首会談で「政権合意ができてまだ半年だから、作らなくてもいい」との見解で一致した。維新の失速で、自民が維新に傾斜していく危険性はなくなったと公明党が判断したためと言える。こうしたことから、自民、公明の過半数確保は確実だ。

 一方の野党。自公両党による「過半数獲得阻止」を目指すが、選挙協力態勢は困難を極めている。その最大の原因は、橋下徹・日本維新の会共同代表(大阪市長)による一連の「慰安婦発言」で政党支持率を一気に下落させことにある。同党内ですら混乱し、5月30日には、大阪市議会に橋下市長への問責決議案が提出された。成立すれば出直し市長選となり追い詰められることになっていたが、公明党が「関西特有の事情により橋下氏を助けた」(同党関係者)ため、最悪の事態は回避したものの崖っぷちに立たされていることに変わりはない。

 維新の劣勢を見たみんなの党の渡辺喜美代表は、維新との選挙協力解消を宣言した。5月19日の記者会見で渡辺代表は、橋下氏の「慰安婦発言」について「言い訳を100万遍しても国民は理解しない」とし、「信頼が失われ一緒に組むべき相手ではない。関係を断ち切る」と語ったのだ。それまで維新とみんなは25選挙区で候補者の一本化で合意。1人区では、9選挙区で維新が、3選挙区でみんながそれぞれ候補者を立て互いに推薦することで合意していた。

 ところが、事態は一変。協力は御破算に。千葉選挙区(改選3人)では、維新の候補がみんなの党の推薦を得られないのであれば出馬を辞退すると申し出たため、維新は候補者を差し替えることになった。「昨年の衆院選では維新とみんなの協力がしっかりあれば維新は野党第一党になったろうし、みんなも10議席はさらに伸長できたはず。その苦い経験から今回は協力態勢を築いてきたが、もはや修復は不能だ」(全国紙政治部デスク)。

 先に紹介した朝日新聞の世論調査では、参院選比例区の投票先に維新を挙げた人は7%で、1月の調査(16%)と比べ半分以下に落ちた。NHKの調査(5月10~12日)でも、維新に対し1月の段階では6・5%が支持していたが、5月には2・4%と下落している。一方のみんなの党も2%台の支持率しかなく低迷状況を脱していない。

 維新後退でにわかに元気が出てきたのが民主党だ。昨年の衆院選で惨敗し政権を自民、公明に明け渡したが、参院では依然として第一党の85議席を持っている。そのうち、選挙のない非改選組は42人。今回、選挙区に36人、比例代表に20人擁立(5月末時点)している。離党者が相次いだ影響で、1人区での候補者擁立が遅れている。

 民主党にとって有利なのは、維新とみんなの党が組んだら勝てない選挙区でも分裂していれば漁夫の利を得られることだ。しかも、維新と離れたみんなの党が、民主党と接近する動きまで出てきた。民主党の加藤敏幸選挙対策委員長は5月24日、みんなの党の浅尾慶一郎選挙対策委員長と会談し、31ある1人区で、競合を避けるための候補者調整をすることで合意した。和歌山、富山、岐阜などを念頭に置いたものだ。

 民主党は参院選対策人事として、細野豪志幹事長の下、中川正春幹事長代行のほか、馬淵澄夫幹事長代理、長妻昭元厚生労働相、蓮舫元行政刷新相を新たに幹事長代行に充てる人事をし、発信力を強化したい意向だ。また、社民党とも競合しない選挙区で協力することを決め、社民党が無所属、推薦候補として擁立する大分選挙区(改選1人)では、独自候補の擁立を見送ることにした。社民党も同党が擁立しない選挙区での民主党候補の支援を前向きに行うことになった。

 ただいくら「有利」といっても、民主党政権時の失政を厳しく問う批判は弱まらず、国民の政治信頼を失ったままだ。先日行った「大反省会」に対しても「責任転嫁ばかり」などの叱責が相次いでおり、厳しい戦いが待っているのは間違いない。「選挙区では現在、長野、埼玉、愛知で善戦しているが、東京では2から1に減り、比例代表でも2ケタに届かないのではないか」と指摘する政界関係者の予想では、最終的に13議席程度になると言う。改選数が43人なので、30議席減という惨敗になる見通しだ。

 さらに、自民党は、民主党を離党した平野達男元復興相が岩手で自民党新人をリードし、岡田克也元副首相の地元・三重や、反戦活動の強い沖縄で落とす可能性はあるが、それ以外は強く、70の大台をうかがう。維新は橋下発言の影響で戦う態勢を確立できず、選挙区で当選する可能性のある候補者はゼロ、比例で数議席しか当選できないぐらい惨敗する可能性を否定できない。衆院選ではいきなり第2党の民主党にあと2議席と迫る54議席(小選挙区14、比例40)を獲得して第三極の力を見せつけたが、初の参院選挑戦では、党としての存亡のかかる厳しい戦いを強いられることになる。

 民主、維新の大苦戦の影響は、みんなの党にも出てくる。昨年の衆院選で獲得した比例代表数は524万票で、維新の1226万票を合わせると1750万票となり、大勝した自民の1662万票を超えたため、参院選の行方が注目されてきた。橋下人気に乗って上昇気流に舞い上がるみんなの党の戦術は水泡に帰し、第三極ブームは消えて期待感は萎んでしまった。そのため、比例代表票は両党とも激減し、比例代表の7割の議席が自民、公明に行くことになろう。

 「弱小政党が束になってかかっても勝てないのに、バラバラでは戦いくさにならない。それが今度の夏の陣だ」(政界関係者)とさえ言われるだけに、永田町では早くも参院選挙後の政権運営についてのシナリオが論じられている。

 少なくとも、自民、維新、みんなの党が参院で3分の2となる162議席を獲得し、衆参両院で改憲発議を緩和するための条件を確保することは不可能となった。それ故、安倍首相としては公明党との協調を図りつつ、まずは改憲が発議されても次の段階で国民投票にかけられる際に不備となっている国民投票法の整備を優先させるなど安全運転を心がけながら、経済再生や教育再生に力点を置き、長期政権への足場固めのための内閣改造などに踏み切ることになろう。

 一方、惨敗する野党は、党の存在意義を見直すなど解党的出直しができるかが問われることになる。それができなければ国民の信頼はますます失われ、再び立ち上がることができなくなろう。

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