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子宮頸がんワクチン製薬会社 中国で巨額贈賄事件

利益優先体質でトラブル続出

 重篤な副反応の報告が相次いだことから、厚生労働省が定期接種の推奨を中止した子宮頸がんワクチン。2種類あるワクチンの一つ「サーバリックス」を製造販売する英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)の中国現地法人幹部らによる贈賄事件が7月に発覚し、波紋を広げている。というのは、この事件で浮き彫りになったGSKのなりふり構わぬ利益優先体質と同ワクチンの定期接種化は無関係ではないとの疑惑を投げかける格好となっているからだ。

 中国公安当局の捜査対象となっているのは、販売拡大や価格のつり上げを目的として、GSK現地法人幹部が政府高官や医療関係者に、巨額の賄賂を渡した疑い。その額は日本円にして500億円近い。その金を捻出するため、取り引き先に水増し請求させていたというおまけまで付いている。

 捜査はGSK以外の欧米外資にも及んでいることから、欧州連合(EU)で起きた中国製太陽光パネルの不当廉売紛争に対する中国側の圧力との見方があった。しかし、英国の同社幹部は違法行為を認めており、同社の利益優先体質に批判の声が高まっている。

 というのも、GSKは海外で数々の不正が発覚し、多くの訴訟を抱える企業だからだ。薬害から消費者を守る運動を続ける、ある製薬会社ウォッチャーは「治験データの改ざんや、賄賂は昔からやっている。人の命よりも利益を重視するのが製薬会社」と語り、その代表として同社の名前をあげた。

 GSKの体質を象徴するのは昨年、米司法省との間で成立した和解だ。主力商品の一つである抗うつ剤「パキシル」を米食品医薬品局(FDA)の認可なしで18歳未満に販売促進したことや、糖尿病治療薬「アバンディア」の安全性に関する一部データをFDAに提出しなかったことで、有罪を認めて30億ドル(当時のレートで約2400億円)という莫大な和解金を支払うことで合意した。

 製薬業界は1980年代後半から、抗うつ剤をはじめとした向精神薬の販売に力を入れてきたが、訴訟が相次いだことなどから、最近はワクチン・ビジネスにシフトしている。先のウォッチャーは、日本のおける子宮頸がんワクチン問題もGSKの企業戦略から見る必要がある、と指摘する。

 このワクチンは3回の接種が必要で、その費用は合計5万円。その費用は、今年4月から無料となったが、それには国と地方自治体合わせて年間約300億円という予算が必要だ。

 その一方で、定期検診でほぼ100%予防可能なのが子宮頸がん。しかし、検診率が高い欧米に比べて、日本の検診率が約20%にとどまり、これが患者増加の一因となっている。しかも、ワクチン効果が期待できるのは10万人に7人しかいない(日本人の場合)上に、副反応が避けがたいのがワクチン。

 こうした事実を見れば、ワクチン接種に巨額の予算を投ずるよりも、検診率アップに使ったほうがより効果的なのは誰の目にも明らか。

 そこで、厚生労働省の「定期接種化」という不可解な決定と、GSKの利益優先体質が結びつき、疑惑が指摘されているのだ。すでに、一部週刊誌は、定期接種化に取り組んだ政治家と同社との関わりを報じている。この際、製薬会社、政治家、医学界、そして官僚がつくる〝医薬利権構造〟の闇をあぶり出す必要がある。

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