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米前国防長官が危惧するサイバー・パール・ハーバー

 米国のパネッタ前国防長官はこのほど、ハッカー攻撃のリスクを「サイバー・パール・ハーバー」と刺激的な表現で語った。

 中国を代表する通信機器大手である華為とZTEが、米政府の通信システムから排除する動きが米下院で表面化したばかりだ。

 米下院連邦議会は1昨年10月に、米国に進出している中国の通信機器メーカーに関する調査報告書を発表。中国の華為とZTEの2企業に対し、米に入ってくると米国の情報が筒抜けになってしまう可能性があるので、通信システムの調達からこの2社の製品を排除すべきだという報告書を提出した。

 これは突然、出てきたものではなく、米政府にショックを与えた事例が下敷きになっている。

 米政府をして震撼せしめたものは軍事機密の流出懸念だ。中国人民解放軍は昨年9月に、中国のステルス戦闘機を発表。レーダーをかいくぐる、見えない戦闘機である中国のステルス戦闘機を見た米空軍幹部は仰天した経緯がある。米空軍のステルス戦闘機の設計図とその仕様が、そのまま盗み取られていることがありありだったからだ。

 軍事スパイは従来、機密の設計図や青写真を伝統的なスパイが物理的に盗み出したものだが、今回はサイバーセキュリティーが破られて情報空間を通じて機密情報が中国側に筒抜けになっていた可能性が高いというのだ。これが米政府の判定だった。

 販売実績で世界2位にまで浮上してきた華為の通信機器をペンタゴンが入れると、ペンタゴンの軍事機密情報が中国に筒抜けになるという懸念があるというのだ。

 中国の作る通信機器というのは何か細工があると考えても不思議はない。中国リスクというものを、そういう面からもとらえないと、国家の心臓部にドスを突きつけられる「サイバー世界のキューバ事件」が発生しないとも限らないのだ。

 サイバーワールドを戦場とする米中バーチャル領土問題が噴出した格好だ。米国内の政府、金融システム、エネルギーなどコア・セクターは「米国の核心的固有領土」であり、これを脅かすハッカーの不法侵略行為を糾弾しているのだ。

 パネッタ国防長官の懸念はリアリティーがあるものだ。

 「ハッカーたちは、列車を転覆させることもできる。特に化学物質を運ぶ列車の狙い撃ちも可能だ。大都市の取水源を汚染させるかもしれない。あるいは、国内の広範囲で電力網を破断することも考えられる」(パネッタ国防長官)という。

 中国資本主義は赤い資本主義レッドキャピタリズムでもある。一党独裁制政権の中国共産党がバックに控えるレッドキャピタリズムの企業というものはどういう存在なのか。どういう行動をとるのか。最後のところで、一体、だれが影響力を行使するのかとの基本的な疑問が生じているのだ。

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