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アベノミクスは正しい、ただし野心が不十分

米ピーターソン研究所所長

 米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は2月24日、東京のホテル・オークラで講演し、開口一番「今日の聴講者の関心は、アベノミクスを一般的なアメリカ人はどう見ているかだろうが、普通のアメリカ人というのはアベノミクスなど何も知らない」と述べ、会場を沸かせた。

 ポーゼン氏は第3の矢となる安倍首相の構造改革に対し「ちゃんとした優先順位を与えてやるべきリストを用意している」と評価した。氏のアベノミクの査定基準は以下の4点である。

 ①女性の社会、労働参加②農業改革③階層化する労働市場の変革④競争力強化がそれだ。

 最初の「女性の社会、労働参加」に関しポーゼン氏は「これは社会的正義の問題で、女性も平等に扱われないといけない」とした上で、「女性の投票権がある民主主義国家であり、しかも豊かな経済力を誇るにもかかわらず、男女の格差は日本であまりにも高い」と現状を指摘。続けて「だが、日本が迎えようとしている高齢化社会、財政問題の解決の糸口として『女性の社会参加、労働参加』は解決の糸口を与えるだろう」と語り、安倍政権が取り組もうとしている「10万から15万の保育所増設政策」に対して期待を表明した。

 「農業改革」に関してポーゼン氏は「日本のコメ制度は、農業就労者から窃盗して、消費者に高く売りつけていることにほかない」と手厳しく批判。「安倍政権は、自主的に農業改革を進めようとして、TPP交渉にも参加した」と及第点をつける一方で「ただ野心が余りにも低すぎる」と注文を付けた。

 ポーゼン氏が言いたかったのは、農業というのは国の基となるものだが、どの国もうまくいっていない。日本は、この問題だけは特別なものだと勘違いしているが、保護政策は依存を産み、依存体質からは競争力ある農業に育ちようがないということだ。

 さらに、ポーゼン氏は「日本の労働市場は正社員とパート社員といった具合に二階層化しているが、改善が必要」と指摘。「パート社員には正社員に認められている福祉が与えられていないし、正社員はそのステータスを守ろうとして階層化が固定化しがちだ」として労働市場の改善を促した。

 医療分野での改革の必要性についてもポーゼン氏は「日本社会ではヘルスケアを妥当なコストで受けられるニーズが高まっている」と指摘した。

 なおポーゼン氏は「アベノミクスを策定した安倍首相の動機が、ただ日本を豊かにしよういうのではいけない。それは日本がより強力なアジアの秩序を構築することにある」とし、それは「中国によって支配されないため」だと総括。安保、防衛、軍事だけではなく活力ある経済を取り戻して日本が米国の強力な同盟国になることで、アジアの安全に寄与できるというのである。

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