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茨の道が待つ中国経済 不動産バブル崩壊必至

 これまで上昇を続けてきた中国経済が大きな局面を迎えている。

 改革開放以来、中国は基本的に高度成長を続けて2010年には日本を抜いて世界第2位の経済大国になった。通常、経済成長というのは、投資と輸出、消費といった「3頭の馬車」がけん引していくものだが、中国の場合、もっぱら投資の伸びに頼った成長を続け、いわば一馬力経済という偏ったものだった。

 発端は2008年のリーマンショックだった。経済の落ち込みを懸念した政府は、4兆元(1元約17円)もの公共投資で景気の底上げを図った。

 同時に大幅の金融緩和を実施した結果、一時、銀行はいくらでも資金を提供してくれるという時期があった。それで製造業から不動産、地方政府のインフラ建設まで、至る所で投資が爆発的に伸びた。リーマンショック前の2008年には土地代も含めた投資額というのは15兆元だったが、翌年には19兆、24兆、30兆、36兆と毎年20%以上もの勢いで伸び続け、昨年は43兆元を超えたとされる。日本円で換算すると1年で700兆円を超える投資がおこなわれたことになる。

 しかし、問題は投資の質だ。製造業では大量の設備投資をした結果、物を作りすぎて値段が大きく落ち込み、投資した設備を止めざるを得ないケースが急増した。

 不動産は急騰しているので、今のうちに買っておけとか、値上がりを期待した利殖買いがあって需要も旺盛だった。それで至る所で住宅建設が起きたが、こんなに高いマンションを作って買う人はいるのだろうかと思うほどにまでなってきている。

 政府も道路や地下鉄など膨大なインフラ投資を実行した。しかし、これらの投資は出費のかなりの部分を借金で賄っている。

 利息も元本も返す必要があるが、利益を生まない投資が積み上げられた結果、借金の返済期限が来ても、借り換えでしのぐしかない危ない橋を渡っている。

 当然、こうした投資頼み、借金漬けの経済成長がいつまでも続けることはできない。

 しかし、投資を抑えようとした途端、成長率低下を招く。残る消費と輸出という「2つの馬車」は、合計しても4%足らずの成長力しかなく、投資を前年比で横ばいにするだけで、成長率は4%を切りかねない実態がある。

 投資を前年より減らせば、さらなる低成長率へと落下していかざるをえない。結局、投資で経済成長をけん引してきた手法が続けられなくなって、中国の成長率がずるずる落ち始めている。

 北京や上海では東京より高いマンションは多くある。ただ日本のバブル崩壊イメージを当てはめて、中国バブル崩壊必至と見るのは考えものだとみる向きもある。というのも共産主義国家の中国では、土地は国有で売り手は政府だけ、土地の売り急ぎが起きにくいとか、中国の不動産開発業者というのは資金回収が早いので、マンションが倒産するというよりは買った人が含み損を抱えるといった国情の違いもあることから、ただちに日本と同じ道をたどるとはいえない面もあるのは事実だ。

 ただ地方の一部の中小都市では、すでに建てすぎたマンションがゴーストタウンになって、業者が売れない在庫を抱えすぎているとかといった危機的状況が顕著になってきている。

 昨年以来、シャドーバンキングも大きな問題として浮上してきた。

 投資に代わる成長のけん引役が不在となっている今、政府は従来の成長モデルが終わったという危機感をもっている。

 昨年11月に開催された共産党の3中全会では、習近平主席が規制緩和したり民間企業の活力で経済成長をするという大胆な経済改革プランを発表した。これまで国有企業や地方政府の抵抗で。今まで手を付けられなかった改革方針だが、ただ、今のところこうした改革プランが具体的に動きだしているわけでは決してない。

 中国では前首相がそうであったように、西側向けの思い切った改革案を発表はするが、これまで実行されることはなく「言うだけ番長」と揶揄されたほどだった。

 いずれにしても投資を抑えながら同時に社会の安定を担保する必要がある中国では、綱渡りのような厳しい茨の道が待ち受けている。

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