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尖閣問題、中国の癖玉に気を付けろ

インタビュー 参議院議員浜田和幸氏に聞く

 このほど、北京で開催された「世界平和フォーラム」に参加した参議院議員の浜田和幸氏が、尖閣問題で中国側が新しい情報戦略ともいえる癖玉を持ち出してきたことを明らかにした。浜田氏の持論は、国家の総力をあげて情報広報戦略を駆使する周辺国の謀略に負けない、我が国の世界に向けた情報発信力の早急な整備だ。中国語、英語に堪能な浜田和幸氏は、世界の政治家やジャーナリスト、経営者らが集う国際会議には務めて参加するようにしている。


――議員になっても国際派を通している。

 海外の経済人や研究者、ジャーナリストらとの交流は大事だ。7月7日からイギリスで開催されるインテリジェンスに関する国際会議に出席する。

――テーマは?

 「ウクライナ危機後の新国際秩序」だ。クリミア問題では、アメリカも振り上げたこぶしはポーズだけで、効果のある政策を打ち出せないでいる。オバマ政権は実質的には何もやっていない。軍事的な介入をするわけでもなく、なし崩し的な状況となっている。ウクライナは大の親日国であり、ロシアが実効支配しているわが国固有の領土である北方4島にもスターリン時代に強制移住させられたウクライナ人が多数暮らしている。ウクライナ危機はロシアとの交渉を進める日本にとっても避けて通れない課題のはず。

 ウクライナも日本もロシアの隣国であり、共通の課題を通して連携できる可能性がある。イギリスはユーロを導入していないが、同じ経済圏であることは間違いない。その中でロシアとどう向き合うのか腐心している。そんなイギリスの議会関係者との意見交換は欠かせない。現在、国際的に孤立するロシアに対し中国が急接近し、ヨーロッパに提供していたロシアの天然ガスを中国が引き受けましょうという話になった。米中ロを巡る熾烈な駆け引きが繰り広げられているわけだ。

 集団的自衛権など安倍政権はさまざまな知恵を巡らせているが、アメリカが最後の頼みの綱のような、依然として冷戦時代の呪縛から抜け出ていない面があるのは気がかりな部分だ。もう少し、自前の情報収集や分析に基づいた、日本らしい外交戦略、安全保障のあり方を追求すべきである。自国が攻められたら、あるいは密接な関係にある他国が攻められた時を想定し、多様なグレーゾーンを議論しているが、大いに疑問に思われる。なぜなら今の世の中は、想定外のことが次から次に起きる時代だからだ。

 にもかかわらず、何か一つ一つの事例を俎上に載せて、皆で議論するなど、手の内を世界にさらしているに過ぎない。こんなことを際限なくやっていたら、どこからも日本とは情報の共有はできないと見限られてしまうだろう。わが国は日本版NSC(国家安全保障会議)を立ち上げたが、総理の感度はいざ知らず、安全保障の専門家と呼ばれる補佐官らの感度は研ぎ澄まされているとはいえないようだ。地球規模を通りこしてサイバーや宇宙空間にまで広がる安全保障を取り巻く環境の変化をどこまで受け止めているのか、疑問点が山のようにある。

 最近、公明党の山口代表とも話す機会があった。公明党も苦悩して今回の結論を出したようだ。支持者である創価学会の人たちを含めて集団的自衛権の行使を説得するためには、抑止力だけではだめだったという。「平和の党」としての外交力を重視し、車の両輪のごとくフルに稼働させて初めて、日本の安全を担保できるという説明だった。それはそれで十分、納得できる部分もある。

 抑止力と外交力はどちらも大事だけれど、今、日本が世界に向き合わなくてはいけない課題や挑戦というのは、単なる抑止力や外交力ではカバーしきれないものだ。なぜなら、想定外の事態が次々と起きているし、これからもますますそのスケールは大きくなってくるからだ。アメリカだって、十分対応できていないから、アフガニスタンでは泥沼化してしまった。シリア、イラクでの体たらくも同じだ。アメリカ式の軍事的圧力が効果を発揮していないことを理解する必要がある。

 「9・11同時多発テロ」以降、アメリカは情報の感度を鋭くして、スノーデンが暴露したように、世界中の通信ネットワークに侵入し、盗聴に精を出している。米国内でもそうだし、ドイツのメルケル首相も四六時中、盗聴されていたことが判明した。スノーデンの告発によれば、日本も例外でないことは容易に想像できる。実際、在日米海軍の情報機関では、わが国の国会議員や政府要人の行動をつぶさにモニターし、30分おきにワシントンに情報を送っている。世界中を相手にそれだけやっていてもアメリカはテロ情報を収集しきれていないし、効果的対策も講じきれていない。中国も同様だ。ウイグルとかチベットの少数民族問題を抱え、宗教的価値観の違いから、様々なテロがいつ起きるか分からず、習近平国家主席も戦々恐々となっているようだ。

 日本ではまだ顕在化していないが、いつ何どき、そうした問題が噴出するかわからない状況があるといえよう。きっかけになるのは、貧富の格差や地域間の格差、経済金融面での抑圧感だ。今、勤労者の3分の1が非正規雇用になってしまっている。結婚もできない。子供も産めない。最近のニュースを見ていると、悲惨な犯罪が多くなる一方だ。オウム真理教ではないが、そういう動きが国内テロに結びつくリスクは高まっているのではないか。要は、他国から攻撃を受けるというシナリオだけでなく、もっと身近な国内で、いつ何どき、国家の安全を根底から覆すような事態が起こるかもわからないのに、そういうところに頬かむりをしているのは問題である。

 先週、北京で開催された「世界平和フォーラム」に参加した。アメリカからはリチャード・アーミテージやスティーブン・ハドリーなど大統領補佐官経験者などが、多数、北京に集まった。フランスやイギリスなどヨーロッパからもロシアやアセアン、韓国など近隣諸国からも首相や外相経験者を含め総勢500人ほどが参加した。一方、日本はどうかというと、今回の会議は3回目だったが、友愛精神溢れる鳩山由紀夫元総理が毎回出ている程度で、現役の国会議員は私だけだった。

 この会議で大いに参考になったことだが、世界の政策立案者に対し、日本がいかに、危ない方向に舵を切っているのか、中国側は盛んにアピールする場として活用していた。安倍政権は、集団的自衛権の行使に走り、靖国神社参拝、河野談話や歴史見直し等を通じて軍事大国化の道を模索している、というわけだ。そして尖閣諸島の国有化も日本の戦前回帰や中国侵攻の準備であるとアジテートする有様。自分たちは毎年、二ケタの軍事費を増大させているのだが、この点については、「そもそもスタートする時点が違う」と切り返す。列強に侵略され、日本に植民地化されるという厳しく貧しいところから立ち上がったのであって、アメリカや日本とは全然違う、と主張しているのである。日本における憲法改正論議を含めて、安倍政権が集団的自衛権行使へ舵を切ったことで、再び中国を包囲し、領土的、軍事的野心を持ち始めた、と日本脅威論を内外にアピールする場として、世界平和フォーラムなど国際会議の場を最大限に利用しているわけだ。

 しかも、尖閣の領有権について言えば、日本政府は当然、歴史的にも国際法的にも、日本が清国の時代から、中国人がだれも住んでいないことを確認したうえで、開発してきたということだが、今回、中国は反論の材料を揃え、日本側の主張を根底から覆す準備を明らかにしたのである。中国は何を言い出したのか。驚くべきことに、沖縄もそうだし、日本本土も中国のものだと言いかねない勢いなのだ。白髪三千丈の中華思想の国であれば、さもありなんと思われるが、要注意である。

 更に言えば、清華大学が総力をあげて、尖閣の領土権を主張する材料を収集しているのである。尖閣は、もともと古賀辰四郎氏が所有していたが、東京都知事だった石原慎太郎氏が山東昭子議員の仲介で、買い取り交渉が進んだ経緯がある。全国から募金も集まった。ただ石原主導では、中国との関係が難しくなるので、当時の野田総理が国有化はするが、現状維持ということで、一件落着を模索したのである。しかし、中国は猛反発。その結果、戦後最悪と言われるまでに日中関係は冷却することに。しかし、これでは中国側もまずいと判断したようで、今回、合法的に尖閣の所有権を主張する証拠を持ちだしてきたのである。

 すなわち、古賀氏の意向を受け、実際に現場の開拓責任者だった伊沢弥喜太氏の長女の遺言状を中国は探し出してきた。それによると、あの島々に伊沢氏らが初上陸して、開拓を始めた時、中国人の遺体や中国人の生活の跡が明らかに確認できたという。しかも、当時、日本政府は魚釣島(尖閣の中国側の呼び名)が中国の命名した島嶼であることを把握していた証拠があるというのである。伊沢氏の長女の遺言状には、そうした経緯が詳述されており、「魚釣島は本来の所有者である中国に返すべきだ」とまで明記されている。

――そもそも、その遺書は本物?

 そこが問題だが、私は見せられたが、真偽の程は分からない。実は、この資料を発掘した劉教授曰く、「その他の歴史的な文献も揃えて、7月には清華大学の学術論文集に掲載する」。こういう歴史問題を政府間で話し合えば、正面衝突して埒があかなくなるだろう。そこで、双方の学者や研究者たちが、中立公平な立場で歴史の検証をしましょうというのだ。フォーラムに参加した早稲田大学の西原春男元総長や新潟県立大学の猪口孝学長らも「民間の研究者が時間をかけて研究すべきだ。その結果を両国の政府に情報公開すればいい」と応じているようだ。学者の立場からすれば、もっともな流れであろう。政治家同士ではそうはいかない。お互いの立 場を主張し合い、話が進まないことは目に見えている。中国側はそれを見越した上で、アカデミズムを巧みに利用しているわけだ。

 言うまでもなく、良識的な頭で考えれば、そういう資料があるのであれば、政治の立場はひとまず置いて、中身が本当かどうか、検証するだけはやったらどうかとなるだろう。そうなればしめたもので、中国とすれば最終的には自分たちのものにする道が開けると踏んでいるに違いない。万が一、平行線になったとしても、「フイフティー・フィフティーなり6対4で共同開発を」というような話にもっていける可能性が出てくる。現状では取りつく島がない。それこそハーグの国際司法裁判所に提訴するといっても、日本とすれば本来日本のものだから裁判でどうこうするいわれはないと突っぱねる。中国は対応する方法がない。そこで中国とすれば情報広報戦略の癖玉を持ち出したわけだ。

 問題はこれを日本が無視してしまうと、中国側が学術論文をどんどん発表して、国際社会にアピールしてしまうことである。さらに日本が学術的調査を通じてしっかり検証することすらやらないのは、日本側にそれをされると困る事情でもあるのか、と勘ぐられる材料を与えることになりかねない。そういう形で日本にとって不利な状況がどんどん積み上げられてしまう。われわれは中国包囲網を作っているという思いでいるが、実はその裏をかくような形で中国は国際社会に対して働きかけを加速している。そういうことすら、日本の政府は情報をつかんでいない。集団的自衛権など勇ましい議論は結構だし、抑止力になることも否定できないが、それだけでは不十分だと思う。イギリスのMI5や6ではないが、情報収集と分析、そして国際社会へのアピールに人や金や権限をもっと投入しなければならない。

――平和フォーラムでの中国側要人の発言は説得力があったのか?

 フォーラムは6月の21、22日、北京の清華大学で開催された。中国側のトップは外相を務め現在、国務委員の楊潔●(竹かんむり+褫のつくり)(ようけっち)氏だ。軍人では人民解放軍の副参謀長が出てきて、徹底的に日本批判を繰り広げた。昼食会の時も、孫副参謀長がメインスピーカーだった。食事がまずくなること請け合いだ。ああいうところが中国の独善的なところで、昼食会に出席していた海外の参加者は一様に顔をしかめていた。人民解放軍の責任者が来るというから、どんな話になるのか当然、聞き耳を立てていたが、徹頭徹尾、安倍総理批判だった。しかし、そういうことをやればやるほど、中国はマナーをわきまえない非常識国家となる。

 ただ、そういう人物が政権の中枢に陣取っており、日本に対する危機感を煽ることで自分たちの国防予算をさらに確保したいという意図が見え見えである。そうしたチキンレースを抑えるには、はやり首脳同士がトップに相応しい信頼関係を構築する必要がある。習近平主席が韓国の大統領と会い、共に日本批判で歩調を合わせたのも、安倍総理に対する間接的な圧力以外の何物でもない。安倍総理が中国や韓国のトップと直接話し合えないのは問題だ。

 中国との関係は、ロシアやアセアン、欧州、アメリカよりある意味ではより重要な意味を持つ。日本企業は既に2万社が中国に進出している。中国人を1000万人以上を雇用している。北京にある日本大使館の情報では、1000万人どころではなく、2000万人近いという。それだけ日中の経済関係は密接な一枚岩になっている。反日デモが起き、日本レストランが破壊され、日系デパートで商品が奪われたことはあるが、中国人が2000万人も日本企業で働いている事実は大きい。なぜなら、その人達の家族や地域の知人友人を含めれば、1億人や2億人の日本シンパを抱き込むこともできるからだ。

 何しろ、世界の中で一番、日本語を勉強しているのは中国人。日本に最も多く来ている観光客も中国人。2020年の東京オリンピックで2000万人の観光客を誘致するというけれど、現在、訪日外国人のうち、アジアからは500万人、600万人だから、中国人を倍増させないと、目標達成できないことは明らかだ。なぜ、そんなにたくさんの中国人が来るのか。政治的に戦後最悪と言われる環境の中にあっても、一般の中国人は日本の商品やサービスが安全且つ安心で、すばらしいということを理解しているからに他ならない。だからこそ、そういう人たちをもっと抱き込むということを、戦略的に進めるべきではないか、と予算委員会でも外交防衛委員会でも安倍総理に問い質した。「よく分かります」と総理はおっしゃるのだけれども、それで終わり。どうやら足を引っ張る人たちが周りにたくさんいるようで、中国に対してはなかなか柔軟に対応できない。しかし、日本経済にとって一番大きな影響力をもっているのは中国だ。アメリカよりはるかに重層的な経済関係がある。であるならば、もっと柔軟且つ創造的な発想で、アメリカの力も利用し、ロシアとも渡り合って、中国を日本になびかせるべく、知恵とエネルギーを費やすべきだ。

――鄧小平が毛沢東の権力集中型の独裁的なシステムの弊害を認識して改革開放以後、集団指導体制を敷いたが、習近平国家主席は、首相の経済的権限も自分が持つ。国家安全保障委員会トップにも就任し、情報も諜報、公安、司法も全部握る。一人の人間が全部の権限を持つような強権的なパワーを持つようになっているが?

 太子党といわれる習近平国家主席には、軍歴はほとんどないし、経済的に指導力を発揮できるかというと、まだまだ未知数が大きい。そのため、自分の権威を徹底的に印象づけるために綱紀粛正という名目で腐敗防止に動き、幹部連中の不正を暴き、厳罰に処している。中国では貧富の格差が拡大中で、国民の不満が高まる一方だ。近場のマカオはもちろん、シンガポールや遠くはフランスのニース、モナコのカジノにまで、中国人が押し掛け、豪遊三昧している。問題はそういう連中の多くが、国の資金を懐に入れ、地位や立場を不正に使っていることだ。それに対する国民の不信感は収まる気配が見えない。

 そういうことを放置したままで「中国4000年の夢」を語っても、今の権力を維持するのは難しいだろう。経済を発展させるため環境対策を無視し、世界の工場になったが、そのあおりで国民の生命が日々脅かされる、すさまじい公害大国になった。だからこそ、日本の環境技術が生かせる可能性は高い。PM2・5問題でも私の地元鳥取県では、このところ連日のように、「不要不急の外出は控えましょう」と警戒警報が出ている有様だ。その前は黄砂ですよ。そのおかげで国立公園大山も冬になると黄色い雪が降るようになり、横縞ができ始めた。更にその前は酸性雨で松や杉が枯れたりしたものである。まさに、好ましからざる贈り物を中国は次々と送り届けてくれる。

 しかし、思えば、中国の国内の人たちは、より深刻な健康被害にあっているはずだ。3年前、中国政府が出した環境白書には、北京だけで100万人の奇形児が生まれているというではないか。これは、水、大気、土壌の汚染が原因だ。実はPM2・5について言えば、北京も上海もひどいが、世界に拡散している。先日、カタールのドーハに行ってきた。何に驚いたかというと、外気温が50度という灼熱と巨大な砂嵐だった。到着する2週間前にWHO(世界保健機構)が世界主要1200都市のPM2・5の汚染状態の報告書を出した。それによれば、ドーハは12番目に汚染がひどいらしい。

 確かに砂嵐はすさまじかったが、PM2・5とは違う。「とても信じがたい」とカタール政府の担当者は言う。何しろ、WHOの報告書によれば、汚染が一番ひどいのは北京、上海ではなくてインドのニューデリーとなっているから驚く。インドの首都は北京より3倍もひどい状況になっているというが、なぜこんな報告書ができたのか。カタール政府の結論は、「中国がWHOに裏で手をまわして、自分たちの都市がトップにいかないように工作したとしか考えられない」というものだった。

――その可能性は本当にあるのか?

 もちろん、半分は冗談だと思うが、可能性としては十分ありうるだろう。なぜならドーハでは石炭などちっとも使っていない。天然ガスがたくさん出るわけだから。確かに、砂漠地帯だから風が吹けば砂は舞い上がるのだが、そもそも砂漠の砂とPM2・5とでは大きさが違う。PM2・5というのは、髪の毛の30分の1ほどで、細菌の半分以下の太さ。目に見えない微粒子だ。WHOの報告はにわかには信じがたい。そういう健康問題に対して、中国人はすこぶる敏感で、日本が有するPM2・5のシャットアウト用のフィルター技術に関心を寄せている。そこで中国で新しくできる住宅やアパートには強制的に設置する方向で中国政府に検討を促したところだ。中国のメディアにも積極的に働きかけ、 中国人に分かるように、日本の技術をPRすべきだと思う。日本は宣伝下手だから、いいことさえやっていれば、後姿で分かってもらえる、みたいな感覚がある。しかし、それでは通用しない。

 これまで日本は中国に対し20年間で、6兆円ものODA(政府開発援助)を供与してきた。そのおかげで道路も鉄道、学校もできた。北京の国際空港にしても日本の資金援助でできているのに、そうした事実を中国の一般の人々に知らしめていない。だから何かあると、反日デモなどで日本のレストランや大使館、総領事館などが被害にあったりするわけだ。ここは、どう考えても日頃から中国は言うまでもなく、世界に向けて情報発信の精度を高める必要がある。クールジャパンと騒いでいるだけでは始まらない。もっと戦略的に情報を活用する方法を確立することが大事だ。

 中国ではアメリカの「ニューヨーク・タイムズ」紙を買収しようという話すら、具体的に出ているくらいで、膨大な資金を投入して、世界のメディアを自由に動かそうと野心的な取り組みをやっている。その一方で、中国は孔子学院のような広報、教育組織を世界中に張り巡らし、中国語や中国文化の学習熱を煽り、これからの世界は中国語を話さなければコミュニケーションが成り立たないというような情報活動に精を出している。他方、日本では国際交流基金の予算は何と孔子学院の100分の1に過ぎない。これでは勝負にならない。だから、発想そのものが日本は内向き過ぎるといえる。

 以前、胡錦濤国家主席(当時)の話を聞いた時、「そのうち、日本から日本人がいなくなりますよ。なぜなら日本の人口は減る一方だから。そこでわれわれ中国の研究者が日本人と中国人のDNAの比較研究をしたら、すごいことがわかりました。日本人は中国人だったんです」と言うのである。そりゃ人間とマウスのDNAを比べれば、98%同じだから。同じ人類同士で、日本人と中国人のDNAがほとんど同じと言うのは当たり前のことだが、さもすごい発見のように語りかけている。

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