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一般社団法人日本・ガーナ経済文化交流会 加賀祐介・代表理事に聞く(2)

私の夢はアフリカ ガーナ拠点に電力、サービス業

 21世紀はアフリカの世紀と言われる中、豊かな資源と治安のいいガーナに他社に先駆け進出している日本・ガーナ経済文化交流会の加賀祐介代表理事に、アフリカの夢とシリアスな宗教戦争など現実問題を語ってもらった。


――今回、ワールドカップでガーナチームは善戦した。

 意外にアフリカ勢は強い。英国、フランスの植民地だったとこともあって、欧州の伝統が生きている。何よりサッカーは、ボール一つあればできるスポーツだ。野球だと装備が必要だが、ボールだけでできるサッカーは底辺が広く、ハングリー精神をバネに、優秀な選手が浮上していくシステムができている。

 ブラジルのネイマールとかアルゼンチンのメッシがそうだったように、裕福でない人たちが夢をつかむために、小さい時からやっていて、人々が夢を求め駆け上がる階段でもある。

 ほとんどアフリカにいけば、テレビで映るものはサッカーばかりだ。スポーツとサッカーが同義語みたいで、国技みたいなものだ。

 先回、紹介した日本から靴をガーナの子供たちに贈るボランティア事業も、子供たちの夢を支えることにつながればと思っている。

――アフリカ事業の展望は?

 ガーナは比較的裕福なので、ガーナを拠点にしてアフリカ全体をフォローしていきたいと思っている。

 アフリカ事業はガーナだけでなく、全体的に見ていくつもりだ。子供たちへの靴の支援に関しても初めはガーナ一国だけど、それ以外の国もアプローチしていきたいと思っている。

 ガーナはいい位置にあって、地政学的な中心でもある。やはり海に面して港湾施設のある国というのは強い。今、アフリカで問題になって国は内陸部が多い。港湾がなくて物流コストが高い内陸部というのは、物そのものが不足しているし、食料品なども値段が高い。

 西部ではマリとか中央アフリカなど港がない国というのは、物資輸送は飛行機しかないのでコストが高くなる。

 道路があっても道そのものがぼこぼこなので、物を運ぶのにコストがかかる。

――アフリカの全体図を教えてほしい。ケニアとか東海岸と南アフリカなどは発達しているイメージがあるが。西海岸と内陸国は?

 アフリカの可能性としては、小さな国は別にして、ほとんどの国に資源があって、経済的な潜在力や可能性は高い。ただ宗教問題は深刻だ。北部のイスラム国家チェニジアとか既成の権力者は倒され混乱し、発展が止まっている現実がある。

 そうした意味で北部のイスラム地域というのは治安問題を抱えているが、南アフリカを中心に南部の方はキリスト教ということもあって安定している。

 ナイジェリアでも赤道から北上するにつれて、イスラム色が強くなり治安は悪化、一部で不法地帯になっている。今、女生徒などの集団誘拐事件などで問題になっているテロ組織ボコ・ハラムというのもナイジェリア北部のイスラム原理主義的な組織だ。ボコ・ハラムは、キリスト教徒自体を敵視し殺害している。

 昨年、アルジェリアで日揮がテロ組織に襲撃された事件があったが、襲撃犯はアルジェリアではなく、マリから国境を越えてきたイスラムテロ組織に襲われた経緯がある。

――宗教戦争はいうのは、いつの時代でも悲惨な結果をもたらす。

 進出する上で、インフラ問題も大事だが、治安問題が一番優先される事項となる。

 ナイジェリアの人口は1億6000万人で、ガーナは2500万人。ナイジェリアは国としても大きいが、西アフリカで考えるとガーナのほうが治安がいい。だからまず、ガーナに拠点を作って、ナイジェリアにまで展開することになる。

――アフリカビジネスの絵柄はどういったものを描いているのか?

 あくまで金取引は、きっかけにすぎない。インフラの部分でいうと、電力事業に力を入れていく方針だ。発電所建設では日本の東芝や韓国企業などにも打診をしているところだ。

――どういうビジネス形態?

 一つは誘致ビジネスだ。こちらに発電そのもののノウハウがあるわけではないので、ニーズの実態や現地情報を提供していく。

 基本的にアフリカで電力は売れる。

――発電形態は?

 水力発電と火力発電の合成形態となる。火力発電の燃料となる天然ガスがガーナにはある。

 ガーナ自身、電力不足の国ながら、周りの国はもっと電力不足で、送電網ができていて電力を周辺国に売っている売電国家でもある。

――自家発電的な小規模なものでもやっていけるのでは?

 バイオ発電だとか、お金のかからない小型水力発電とかのニーズはある。

 まず電力インフラが整備されると、いろんな工場誘致も展開できる。工場を作っても電力がないと稼働しないから意味がない。

 労働力は豊富だが産業が発達しないアフリカのジレンマを克服するには、電力インフラ整備は不可欠だ。

――インフラ整備の優先順位は、通信や道路ではなくて、まず電力なのか?

 一般論でいうと、ガーナの通信技術というのは、パソコンに光ファイバーとなると難しいが、簡易的なアンテナで携帯電話とかはつながる。それでもガーナ全域となるとカバーしきれていないが、主要都市では問題はない。

 道路もどんどん整備されている。この道路整備事業は、ほとんど中国がやっている。中国が作る道路は、質はともかく早くて安い。中国が国をあげてODA(政府開発援助)に近い形でやっていて、労働者も中国人を連れてきて道路工事をやっている。これはガーナだけでなく、アフリカ全体に対していえることだ。

 そういった恩恵を受けているので、アフリカの国というのは中国人がいろいろトラブルとか資源を強奪するようなことがあっても、なかなか一方的に排除するわけにはいかない事情がある。

 道路の品質は別にしても、地域と地域を結ぶ道路ができること自体は意義深いことだ。日本はとても道路整備事業で中国には太刀打ちできないので、教育とかインフラでは橋の建設とかに関わって、日本の得意分野を援助する方針だ。ただモザンビークや西アフリカで、国家の大動脈になるような道路建設に乗り出してはいる。

 アフリカ開発に関しては、JICAの基本戦略があるので、それに沿ったものにしたほうが高い効果を期待できる。

――金と電力の次には、どういう展望を描いているのか?

 サービス業だ。すでに動いている日本企業は、味の素や日清、マルハニチロとか食品産業がアフリカ大陸のマーケットを求めてきている。カップラーメンはアフリカでは大人気だ。

――中国の袋ラーメンもあるのでは?

 味が全く違う。日本と中国の味の違いは鮮明だし、アフリカでもそういう認識は出来上がっている。

――人気商品は?

 日清のUFO(焼きそば)とシーフードカップヌードルだ。日清もナイジェリアとかに工場建設を予定している。

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