トップページ >

今月の永田町 野党再編、展望開けず

選挙対策優先で野合を

 安倍晋三首相が内閣改造・党役員人事を行い、マスコミの世論調査で支持率を上昇させる一方で、野党側は思惑がバラバラで野党再編の展望は全く開けていない。国民本位の政策よりも選挙対策優先の野合の動きまでみられる。このままでは9月29日にも召集される重要懸案山積の秋の臨時国会は、安倍政権・与党ペースで進められよう。


 国会では衆参両院で統一会派を組んだ日本維新の会と結いの党だが、党同士の合流話がなかなかうまくいかず、新党結党前から「野合」との批判が出ている。「なにしろ、肝心の重要政策で一致しないのに党名をどうするか、代表を誰にするかなどでもめにもめてきた。これでは新党をつくっても、先の寿命が短いのは目に見えている」(政界関係者)といったものだ。

 維新と結いは現在、衆院で計41議席あり、民主党(55議席)に次ぐ野党第二の勢力を持っている。参院でも11議席あり、衆参合わせると、公明党の51議席を抜き、第3の勢力になる。ところが、新党設立を9月21日に控えながら重要政策の一致もできず党名もなかなか決まらない。

 6日夜、東京都内で両党の幹事長ら幹部が協議し、新党の名称の一部に「維新」を盛り込むことで合意にこぎつけたのが、ようやくのこと。結い側が「イメージを刷新すべきだ」と「維新」を使用することに難色を示していたことが原因だ。7日には維新の橋下徹代表と結いの江田憲司代表が都内で会い、両党から新党の共同代表を出すことで一致した。維新が分裂する前に橋下氏と石原慎太郎氏が共同で代表を務めたのと同じ形式だ。党本部も同じく大阪と東京に置くことに決まった。

 だが、そうしたことよりも重要なのが政策での一致のはず。ところが、集団的自衛権の行使容認や憲法改正など国家の根幹にかかわる最重要問題ではまとまらない。橋下代表はエネルギー政策での安倍政権との対峙を優先する考えを強調。江田代表は「売れ筋で政権と違いのある商品をそろえていくことが政権交代への戦略だ」と述べ、消費増税などで政権との違いを打ち出していく考えを示したが、それでは小手先戦術に過ぎず政党としての「魂」が欠落している。

 江田氏とすれば、維新との合流は過渡的なものに過ぎず、民主党を巻き込まなければ本格的な野党再編はできないと考えている。だが、その民主党もばらばらであるだけでなく、危機意識にあまりに乏しい。同党の海江田万里代表は9月26日の両院議員総会で党役員人事を発表する考えだが、その先の舵取りをどういう姿勢で対処するかの戦略をはっきり描けないのだ。

 海江田代表は5日、党人事は「保守系とかリベラル系とか、偏ったことはやらない」と語り、挙党態勢の構築を意識した発言をした。しかし、臨時国会に臨む姿勢を定められず、安倍新政権に対する評価を聞かれても「改造したふり内閣」などとピント外れの評論家的なコメントしかできなかった。

 「大畠章宏幹事長の交代が前提だが、もし、海江田代表が安倍政権との対決姿勢を強めたいなら、後任の幹事長には馬淵澄夫選挙対策委員長か中川正春幹事長代行を据えるだろう。しかし、挙党態勢の構築を目指すなら岡田克也前副総理あたりの起用ではないか」と与党系の政界関係者は指摘する。

 ただ、海江田カラーを出そうとして馬淵氏や中川氏が選ばれても、地味過ぎて世間をあっといわせて支持率アップに役立つことにはならない。一方、岡田氏の場合は、几帳面な性格で華やかさはないが、消費税増税に関する3党(自民、公明、民主)合意の際、野田佳彦首相を副首相として支えた。そこから、自民党の谷垣禎一幹事長(当時は党総裁)とやり合えるとの印象を打ち出すことは可能だ。

 その場合、消費税の再増税や集団的自衛権などにかかわる安保法制作業など政権に対しては是々非々の対応となるため、民主党としての独自色は薄れ、海江田カラーも色あせよう。

 海江田民主党にとって最も困るのが、前原誠司元外相の幹事長就任だ。一時的な人気取りなら前原氏の起用はあり得る。維新・結いの橋下、江田両氏らはそれに拍手をして歓迎しよう。江田氏の野党再編構想は民主党を抱き込んでひとまず完結する。前原氏が民主党を割って維新・結い連合に合流することはないが、同連合が民主党に合流することはあり得る。江田氏はそれでもいいと思っており、その時には必然的に左派は民主党から出て行くものと予測している。

 海江田氏はその道筋があり得ると感じているだけに、前原氏を好待遇することには警戒しているのだ。

 参院で13議席を持ち、114議席の自民党と組むだけで過半数となるみんなの党の出方も見通せなくなっている。渡辺喜美前代表が〝健在〟のときは「自民党渡辺派」などと言われ、集団的自衛権の行使に賛成するなど安倍政権を是々非々で擁護する「責任野党」の姿勢をとっていた。それが、浅尾慶一郎氏が後任の代表となって路線を大きく修正。維新と統一地方選挙での協力関係を模索するなど野党再編を視野に入れるようになった。だが、渡辺氏が秋の臨時国会での復帰を宣言し「野党再編ではなく与党再編だ」などと主張。浅野代表との路線対立が表面化する可能性が出てきている。

 少なくともこの臨時国会で、野党再編への勢いが加速するとの展望は全く開けていないのが現状だ。

この記事のトップへ戻る