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チベットから2本の南下鉄道計画

覇権もくろむ中国の「赤い触手」

 標高5000メートルを走る天空回廊・青蔵鉄道は、中国青海省の西寧とチベット自治区の首府ラサを結ぶ。8月には、ラサからさらに250キロ西のシガツェまで開通した。これまで車で5時間かかっていたラサからシガツェまでを、鉄道だと2時間で済むようになった。

 さらに中国政府は、このシガツェからインド、ブータンとの国境付近にあるドモとネパールとの国境付近のキドンまで、それぞれ延伸する南下計画を発表した。2020年までに着工するという。

 中国の狙いは鮮明だ。20世紀に入り中国の野心は鉄道と共にあった。中国は鉄道建設により辺境地域の併合を行ってきた経緯があるからだ。

 新疆ウイグルも内モンゴルも中国が先ず打った手は、新疆のウルムチと蘭州を結ぶ蘭新線敷設であり、内モンゴルの包頭と北京を結ぶ京包線敷設だった。鉄道ができると、まず送られたのが実効支配するための兵士であり、次に漢民族を陸続と送り込み新疆と内モンゴルの漢族化を進めた。

 その意味からするとチベットから、さらに南下してインド、ブータンへの鉄道を敷設する狙いは、将来の覇権を視野にいれたものであることは誰もが疑わない。

 無論、力が及ばないうちは、もっぱら物資や人を運び、経済圏の拡大にいそしむことになるが、いったん、実効支配が可能な国際情勢や地政学的環境になれば、クリミア半島にロシア兵を送り込んだプーチン大統領同様、中国人民解放軍の兵士を送り込むことを躊躇しないのが習近平主席だ。

 チベットから伸びる2本の南下鉄道の下に潜む、中南海の野望には注意を要する。

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