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アジアインフラ投資銀行

金融覇権目論む中国

 国力をつけた中国が、ついに国際金融制度にまで触手を伸ばしてきた。

 中国の主導する新たな国際金融機関「アジアインフラ投資銀行《(AIIB)が、設立されることになった。北京に本部を置き、資本金は1000億ドルを目指す。出資比率は経済規模に応じて決める方針で、中国が過半を占める見通しだ。

 目指すのはアジア途上国のインフラ整備だ。とりわけ中国と東南・中央・南西アジアの各国を結ぶ「互連互通《「経済回廊《型のインフラ整備で、融資以外にファンド型の出資も行う。インドや東南アジア諸国連合(ASEAN)の9カ国など21か国が、2015年中の発足で基本合意した。

 今、中国経済は霧の中だ。高度成長は終わりを告げ、中国経済の質の向上が問われる時代に入っているものの、中国国内で行き詰まる国有企業に、アジアのインフラ整備という巨大な市場を提供することで経済的桎梏を打破しようという思惑がある。

 なお、アジア開発銀行の議長国である日本は参加を見送った。AIIBの意義や、融資審査基準の上透明さが顕著だったからだ。インドネシアやオーストラリアだけでなく、韓国も上参加だった。AIIBが設立されれば、これまで日米で「仕切って《きたアジアの開発援助にくさびが打ち込まれることになる。

 何よりAIIBという国際機関のお墨付きを得て、中国企業の受注を条件とする「ひも付き《融資が乱発され、中国を利する開発案件ばかりが優先されるという懸念が生じる。融資審査が甘くなれば、環境や人権を無視した開発を助長することも出てくる。

 また、中国に過度に依存した一本足の金融支援枠組みでは、中国経済が変調をきたした際、開発プロジェクトが一気に滞るようになるリスクが大きくなる。

 中国はロシアやインドなどと協力し、新興5か国(BRICS)による「新開発銀行《も創設する。

 だが、BRICSは新興大国の寄り合い所帯だから、民主国家のブラジル、インドなどは必ずしも中国の軍門には下らない。本部こそ上海が取ったものの、総裁ポストはインドが握り、必ずしも中国に満足のいく構成ではなく、中国が描いていたシナリオとは、よほど違った形態になった。

 その点、懸念されるのAIIBだ。東南アジアは小国の集まりであり、大国中国は最大出資国として主導権を握りやすい立場だ。中国への従属的な色合いから恣意(しい)的に資金提供が可能になり、融資に吊を借りた勢力拡大に拍車をかける。それは安全保障面で、中国の高官が米国側に太平洋を2分割して管理しようと持ちかけた発想に類似している。

 いずれも、国際通貨基金(IMF)体制を主導する日米欧の向こうを張り、人民元を国際通貨にして中国が主導する新国際金融秩序を構築する戦略があることだけは間違いがない。

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