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今月の永田町

保守2大政党制への岐路

 民主党は、昨年12月の衆院選で落選した海江田万里氏の後任の代表を決めるため、岡田克也代表代行、細野豪志元幹事長、長妻昭元厚生労働相の3氏による代表選に突入した。1月18日には新代表が臨時党大会で選出されるが、野党再編を志向する細野氏が当選すれば維新の党との合流話に弾みがつき、自民党に対峙する保守2大政党制の実現に向かう可能性が出てくる。一方、党再建の域を出ない他の2氏では現状維持にとどまるとみられることから、党の路線を占う選挙と位置付けられる。


 昨年の衆院総選挙で民主党は、議席を増やしたものの〝総大将〟のクビを獲られてしまった。そのため、執行部総入れ替えを余儀なくされ、中央選挙管理委員会の江田五月委員長の下、代表選を実施することになった。各候補者を一言で表せば、細野「世代交代」、岡田「挙党態勢」、長妻「リベラル」だろう。

 43歳、当選6回の細野氏は、結党にかかわった鳩山由紀夫、菅直人両元首相ら第1世代、政権中枢を占めた岡田氏、野田佳彦元首相ら「6人衆」の第2世代に続く第3世代として世代交代を強調。推薦人には、自身が率いるグループ「自誓会」の若手議員や野党再編に積極的な松本剛明元外相や長島昭久元防衛副大臣らが名を連ねた。

 外相、副総理、党代表などを歴任しバランスを重視する岡田氏(61)には、安住淳元財務相、野田元首相ら「6人衆」をはじめ、北沢俊美元防衛相ら政権を担った衆参の有力者や辻元清美氏ら社民党出身議員、旧民社系労働組合出身の直嶋正行参院議員ら幅広い支持が集まり挙党態勢の重要性を訴えている。

 「消えた年金問題」を追及し、「ミスター年金」の異名を持つ長妻氏(54)は「一匹オオカミ」とも評されるが、今回は自治労、日教組、護憲派が集まる超党派議連「立憲フォーラム」のメンバーら旧社会党系左派の全面支援を受けリベラル色を鮮明に打ち出して戦っている。

 日本記者クラブ主催で8日午後に行われた討論会では、長妻氏が「自民党に代わる野党が渇望されている。今がラストチャンスだ。改革政党の旗振り役として取り組む」と主張。細野氏は「過去の全否定は自己否定と同じ。私たちは変わらなければならない」と一からの出直しを訴えた。これに対し岡田氏は「民主党の全否定からは何も生まれない。オール民主党で原点回帰し、政策を立て直す」とアピールした。

 3者3様のようではあるが「細野さんは集団的自衛権の行使を容認している保守だ。前原誠司さんも細野支持。民主党との再編に期待を寄せる保守的な維新の党の江田憲司代表とも気の合う間柄だ。もし細野さんが当選すれば、民主党に維新が合流する話が浮上するだろう」と政界関係者は読む。

 また同氏は「通産省出身同士の岡田さんと江田さんも話が合わないことはない」と言うものの「岡田さんには野党を再編するために、左派を切ってでも断行するといった気概はない。党再建までが最大の目標だ」と言い切る。さらに「長妻さんが代表になれば、かつての海江田・輿石東幹事長執行部や海江田・枝野幸男幹事長執行部と同様、左派が執行部を占領するので国民政党にはなろうと思ってもなれず、党勢の立て直しは望めまい」と語る。

 この野党再編をめぐっては、告示日の7日に行われた共同記者会見で、3氏とも否定的な発言をした。特に再編派のはずの細野氏は「一緒になるのは現実的には難しい」と語り、再編論を封印して党内の幅広い支持を求めた。この背景には、今回の代表選の新たな仕組みが大きく影響している。

 それは地方票に大きなウエイトを置いたことだ。第一回投票で過半数を得た当選者がいればそれで決定となるが、いない場合は、上位2人で国会議員、参院選公認候補予定者による決選投票で決まる。

 ところが、新たな党則に基づいて行われる今回は、総計760ポイントの中で、国会議員、参院選公認候補予定者は265ポイント。これに対して地方は、地方議員141ポイント、党員・サポーター票が354ポイントと国会議員よりも多い。約22万6000人いる党員・サポーター票だけでも全体の47%、地方議員を合わせれば495ポイントと全体の3分の2を占めてしまう。

 そのため、3氏は国会内での多数派工作よりも、地方にまず目を向けねばならないのだ。その際、最も頼りになるのが民主党の場合、票読みのできる労働組合となる。細野氏が維新の党の主張する労組切りに乗らないのは、当選するために労組票を少しでも多く取り込みたいとの選挙戦術からで、当選してしまえば労組離れをして民主党を中軸とした野党再編に動くだろう。

 地方票の重みはそれだけではない。地方票が党中央に送られ集計が発表されるのが16日。18日の臨時党大会の2日前に地方票が明らかとなり、誰がどれだけリードしているのか、接戦なのか、すでに過半数の候補者がいるのかが分かってしまう。そうなれば、国会議員の投票は、その影響を大きく受けることになる。地方票次第で国会議員票が特定の候補に集中してしまうこともあり得る話なのだ。

 安倍晋三首相は7日に、民主党代表選について「新たな強力なリーダーが誕生し、切磋琢磨していくことを期待している」とエールを送るとともに「責任野党として議論を進める上で、わが党と共に責任を背負っていただきたい」とも呼び掛けた。そのためにも、集団的自衛権のみならず憲法改正など国家の根本的なテーマで質の高い議論のできる政党に民主党が変われるか。

 今回の代表選は、国会に保守の2大政党制が誕生するか否かの岐路となろう。

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