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出る杭を伸ばせ! 天才教育プロジェクト始動

 社会にイノベーションをもたらす「異才発掘プロジェクトROCKET」(日本財団、東大先端科学技術センター共催)が昨年12月10日に、東京・駒場の東大先端科学技術センターで開講した。受講生徒は全国から応募した600人から選出されたスカラー候補生の15人。漢字が書けないが独創的な方法で農業に従事する小5児童や週2、3日だけ登校し後は水族館に通い詰めている爬虫類好きの小4児童など小中学生合わせ15人の子供達だ。

 プロジェクトに応募した生徒の傾向も学習障害をもっていたり、不登校児童・生徒の割合が高い。高IQの子供たちに潜む書字や構文障害、就学前からの早期教育による反作用としての不登校児の存在、知識は豊富でも原理が理解できないといった傾向がある。ただ融通がきかずコミュニケーションがうまくとれなくても、こだわりの強さは強烈なものがある。

 開校式でスカラー候補生たちにiPadを手渡した日本財団の笹川陽平会長は「下村博文文科大臣の御子息もディスレクシア(学習障害)だったが、ロンドンに留学し今では水を得た魚のように舞台芸術で活動している」と励ました。

 日本の教育はオールマイティー主義で協調性豊かな人材育成には優れている一方、突出した才能を殺している側面があり、既成概念を破る革新的な発想を生み出す環境が十分に整っているわけではない。学校に馴染めない子供であっても秘められた突出能力を引き出すため、プロジェクトでは各領域で著名なトップランナーによる講義とディスカッションが行われる。

 初日の講義を受け持ったのは、東大先端科学技術研究センター特任准教授の高橋智隆氏だった。高橋氏はロボット工学に造けいが深い。

 その高橋氏は「意識しない動きが難しい。待ちぼうけだとか、ため息や嘆息、がっかりした姿などだ。私が作るのはキャラクターロボットだ。人型ロボットというのは、おばけのようで脅威に感じる。むしろロボットは、人と機械の中間位置にいた方が安心感がある」と、その道を極めた人にしか語れないようなことを率直に語る。

 講義は一方的なものではなく、幾度となく生徒から手があがり、質問や反論が繰り出される。

 この日、目を引いたのは東大先端科学技術センター教授の福島智氏だった。目が見えず耳が聞こえない盲聾の師で、東大で初めて教授にまで上り詰めた学者だ。

 その福島教授が高い声で「自分の人生は自分で切り開け。そして失敗したら人のせいにするな」と諭した。

 「出る杭は打たれる」。横並びの日本型社会風土の中で、打つのがはばかられる「出過ぎた杭」に育つかどうか、教科書では満足できない異才の卵たちの努力と孵化器たる東大先端科学技術センターのアドバイザリーやチューターたちの包容力にかかっている。

 ダイヤモンドも磨かなければただの石に過ぎない。可能性を秘めた原石を、どう磨き上げ、突き抜けた凸の能力をどう引き出すのか、野心的で革新に満ちた教育が出てくるかどうか期待がかかる。

 プロジェクトの哲学は「ユニークな子供を育てるのではなく潰さない」ことだと言う。

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