トップページ >

低かった総選挙投票率

政権交代の緊張感欠落

 昨年12月の総選挙投票率は、小選挙区で52・66%と過去最低を6ポイント下回るほど低かった。

 最大の理由は政権交代の緊張感がなかったことだ。最大野党の民主党は不意打ちをくらって、候補者を過半数も立てられなかった。結局、政権交代の旗を立てられず、有権者の関心を下げた。

 さらに選挙の争点となったアベノミクスが有権者には分かりにくかった経緯がある。

 景気回復の必要性はどの政党も主張したが、その処方箋では魅力的な野党の政策が見当たらなかった。

 海外でも選出議員の正当性を裏付ける投票率の向上は、民主主義国家の大きな課題となっている。

 昨年11月の米中間選挙の投票率は、第二次世界大戦後最低の36・3%だった。その折、参考になる試みは、ニューヨーク州やバージニア州などで投票所で投票を済ませた人に「I VOTED」と書かれたシールを有権者に配った。投票を済ませた人は、それを上着などに貼ったり、赤ちゃんの服につけたりして街を歩く光景があった。

 フランスでも若者の投票率の向上が課題となっており、棄権率を政治参加の指標として重視している。

 2013年の連邦議会選挙では71・5%など、欧州で高い投票率を誇るドイツでは、いろいろ工夫をしている。例えばスマートフォンのアプリを使うと、様々な政党の政策が表示され、利用者の考えに近い政党が見つかるようになっている。質問は若者が中心となって作っており、若者の政治的関心を刺激するような一工夫がある。

 さらに、投票に行かない有権者に懲罰を課す国もある。シンガポールでは投票を棄権すると、選挙人名簿から一時的に抹消されたり、オーストラリアでは国政選挙の棄権者には罰金20ドル(約2400円)が課せられもする。

 ただ民主主義の成熟した国で、投票権の剥奪や罰金まで取るというのは行き過ぎの感が強いものの、国民の政治参加を促すための努力を怠ると民主国家の墓穴を掘ることになりかねないリスクが存在することだけは確かだ。

この記事のトップへ戻る