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今月の永田町

統一地方選「地方創生」で全面対決

 4年ごとに実施される統一地方選挙が4月12日と26日に行われる。各政党は、党勢を拡大し、地方の基盤を強化して来年夏の参院選で浮上するための重要な選挙と位置付けており、戦闘モードは日増しに高まっている。国会は来年度予算案の成立を受けて安保法制の整備の議論を過熱させる一方で、地方での熱い選挙戦も本格化する。


 自民党は3月8日、都内のホテルで開催した党大会で「地方こそ、成長の主役」をスローガンに統一地方選を戦う姿勢を示した。一方の民主党も同1日の定期党大会で「地域起点」「生活起点」の旗を高らかに掲げて統一地方選を戦うと宣言した。4年前の選挙では東日本大震災の直後だっただけに「防災」をテーマに戦われたが、今回は「地方創生」がメーンテーマだ。

 12日の前半戦は、10道県知事選(北海道、神奈川、福井、三重、奈良、鳥取、島根、徳島、福岡、大分)、岩手、宮城、福島、茨城、東京、沖縄を除く41道府県議会議員と政令市の首長(札幌、相模原、静岡、浜松、広島)および17市の議員選挙が行われる。後半戦はそれ以外の市町村の首長、議員選挙(905議席)が26日に実施される予定だ。

 自民党は今回、接戦が予想される北海道、奈良、大分の各知事選と広島市長選を重点選挙に位置付けている。国政では「1強」とされる自民党だが、昨年7月の滋賀、11月の沖縄、今年1月の佐賀の各県知事選で推薦候補が敗れており「これ以上、取りこぼすわけにはいかない」(選対幹部)と緊張感が漲っている。

 ところが、2月7日に安倍晋三首相が結束を呼び掛けるために招集した全国幹事長会議では、首相が「農家の皆さんが、そして地域の農協が主役になっていただきたい。皆さんが、さらに創意工夫をこらして、農業の所得を上げていくことができるという成長分野に変えていきたい」と農協改革に理解を求めたが、出席者からは「拙速に進めることなく、納得できるような仕組みづくりをしてほしい」といった慎重な意見が相次いだ。「地方創生が安倍政権の核」(党幹部)と位置付け、統一地方選の政策集では「地方の元気なくして〝アベノミクス〟の成功はない」と述べてはいるが、地方でどう判断されるのか。2955人の地方議員数に上乗せできるのか。「地方に景気回復の波が行き届いていないという惨めな選挙結果が出てしまうと、その後の国政での政策に影響が出かねない」(自民党幹部)だろう。

 首相は各閣僚に対し、前半戦の投票日に向け3月28、29両日と4月4、5両日などの土日を中心に、各選挙の応援演説に入るよう要請。3月4日には、統一地方選対策の一環として、当選1、2回生ら若手議員に選挙のノウハウを伝授する「選挙必勝塾」を自民党本部で開催した。谷垣禎一幹事長は「地域に根を下ろしていることが、選挙に強くなる必須の前提だ」と指摘。地方選での自民党勝利に貢献することを通して、自らの選挙基盤を固めるようハッパを掛けた。

 一方、地方の基盤が脆弱な民主党は、地方議員が1349人にとどまっている。「アベノミクスは都市と地方の格差を拡大している。地方いじめの政策だ。ここで地方の声と結びつかなければ来年の国政選挙での躍進は期待できない」と民主党幹部は指摘する。党大会では枝野幸男幹事長が「候補予定者、総支部、都道府県連の活動と一体となって党本部としても最大限の活動を進める」とした上で、安倍政権が掲げている「地方創生」を「実際には地域の基幹産業である農業や福祉の活力を奪う政策、上から目線の政策だ」とキッパリ。「民主党は『地域起点』『生活起点』の旗を高らかに掲げて戦う」と宣言するとともに「民主党に対する信頼を回復させる大きな一歩」として、現有議席の上積みを図る考えを示した。

 さらに「自治体選挙と衆参国政選挙を一体で捉え、来年夏の衆参ダブル選挙も想定した態勢整備を進める方針も明らかにした。

 これに対して、地方選で健闘してきたのが公明党と共産党だ。公明党は国政では衆院35参院20の各議席ながら、地方議員数は「1強」自民党に近い2939人。共産党も衆院21、参院11の各議席で2678人の地方議員を擁する。

 公明党の最大の〝売り〟は今回、軽減税率の導入をアピールすることだ。「生活者支援の充実」を掲げ、消費税率が10%へ引き上げられる2017年度から軽減税率制度を導入することを目指し、対象品目や区分経理、安定財源などの具体的な検討を早急に進めることを訴える。

 さらに、与党税制協議会の下に設置された消費税軽減税率制度検討委員会で議論を促し、具体的な制度設計を進め、今年の秋口までに制度案を決定するとしている。「再増税という痛みをやわらげる軽減税率の導入は、弱者を支援するという名目でかなりアピールできるのは間違いない。少なくとも組織票は固められる」(選挙通)とみられる。

 一方の共産党は統一選挙を「いっせい選挙」と呼ぶ。かつては4400人余りの議員数を誇っていたが、その第一党への〝返り咲き〟を狙っている。4年前の選挙では議席を後退させ「党の自力が不足」との総括を行った。

 そして、選挙勝利のための不可欠な条件は「党の自力づくり」であり、その根幹をなすのは、党員拡大であるとして、党建設の必要性を強調していた。昨年12月の衆院総選挙で共産党は、議席数を8から21に激増させ、18年ぶりの小選挙区での当選と、念願の同党単独での法案提出権を手に入れた。共産党の選挙政策はアベノミクス批判と格差拡大、ブラック企業問題などで、上昇ムードに表情も緩みがちな志位和夫委員長は、統一地方選で反転攻勢へと歩を進めたいと意気込む。

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