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今月の永田町

揺れるジリ貧の岡田民主 共産「国民連合政府」は〝毒饅頭〟

 党勢ジリ貧の民主党が、維新の分裂により国政で野党第2党にのし上がった共産党の選挙協力の提案に揺さぶられている。提案の前提条件として共産党は「国民連合政府」構想の受け入れを求めたことで、民主党内には強いアレルギー反応が起こり、ひとまず連立政権には反対することでまとまった。だが、共産党は閣内に入らず閣外協力でも選挙協力は可能だ、としてさらなる揺さぶりを続けている。来年の参院選で票のほしい民主党の岡田克也代表らは、選挙協力の「協議を継続する」姿勢だが、同構想と選挙協力は民主党にとって決して食べてはいけない〝毒饅頭〟なのである。


 共産党の志位和夫委員長が民主党など野党との「国民連合政府」構想を提唱したのは、安全保障関連法が成立した直後の9月19日の午後だった。志位委員長は、共産党が「戦争法」と決め付ける安保関連法の廃止と安倍晋三政権が集団的自衛権を限定的に容認した昨年7月の閣議決定の撤回という2つを共通目的にして、それに賛同する野党が連立政権を組もうというものだ。

 しかも、この構想で合意した場合、来年の参院選で共産党は「すべての1人区で野党候補の一本化を目指す」とともに「すでに発表したものを含め擁立しないところも出てくる」というのである。

 つまり、共産党は参院選の32ある1人区で独自候補を立てないということだ。すでに選挙区に31人の擁立を決定、うち19人が1人区だが、野党統一候補を出すためには見直しもあり得るというかつてない〝柔軟な〟提案なのである。

 これに飛びついたのが民主党の岡田代表だった。「思い切った提案だ」と評価したのだ。野党に転落して以来、ほとんどの選挙戦で低落傾向が著しい岡田民主党としては、目下上昇傾向に転じている共産党の票は魅力的だ。

 平成22年と25年の参院選の両党の比例代表票を比べると、民主党が約1千800万票から約710万票に激減したのに対し、共産党は約356万票から約515万票に増加している。また、24年と26年の共産党の衆院選の結果をみると、小選挙区は約470万票から約700万票に、比例区は約370万票から約600万票に伸びている。1選挙区当たり2万4千票の計算で創価学会と同じくらいの集票力を持つようになっているのだ。

 「民主党にとって最大の支援団体の連合が力を失ってきている今日、上昇中の共産党の票は魅力的だろう。単純に前回の票を足し算すれば、参院選の1人区だけで7つを奪回できる」と語る保守系の政界関係者だが、「選挙は協力しても単純な足し算とはならず引き算になることもある」とも警告する。つまり、革命を目指すという異質な外来政党(共産党)と結び付くことで、かえって民主党に期待していた支持者の離反を招く可能性があるという読みだ。

 さっそく、岡田氏の姿勢を嫌い離党表明したのが松本剛明元外相である。共産党との連立政権はあり得ないし選挙協力をしても地元が動かなくなることが動機となっている。他にも細野豪志政調会長が10月27日の番組収録で「こちらから共産党に選挙協力を求めることは、その後のことを考えても説明がつかない」と語り、安全保障政策や外交政策などで大きな開きのある共産党との選挙協力自体に否定的な考えを示した。来年改選の桜井充元政調会長(参院議員)に至っては、「代表、幹事長、政調会長、考え方はバラバラ」だし「今の執行部では民主党の再生はできない」などとし、来年の参院選は新党で戦うべきだなどと主張する始末だ。

 こうした党内の批判的な空気を受けて岡田代表は「まずは連立構想の撤回を」と共産党にボールを投げ返した。それでも選挙協力には未練たらたらで、協議は継続中である。

 自民党中堅幹部の話では「もともとこの仕掛けをしたのは小沢一郎と志位」だという。「小沢の地元の岩手県知事選で共産党が候補を立てず、自民党を不戦敗に追い込んだのは小沢と志位の戦略だった。安保法反対でも国会前集会で手をつなぎ、二人の会合はその後少なくとも6回に及ぶ。細川政権樹立の際には非自民・非共産だったはずの小沢らしい変身ぶりだ」と嗤う。志位委員長も連立構想について「小沢さんとは全面的に合意に至った」と語っており、共同で野党再編に乗り出す構えだ。

 ただ共産党の政権構想は、かつては「よりまし政権」という呼び方で共産主義革命の道筋の途上にある民主連合政権構想の前段階に、日米安保条約破棄棚上げと天皇制容認を打ち出して政権樹立を求めたことがあるが、それはあくまでも革命戦略の一環としてであった。

 つまり、隔たりのある他党の政策との違いを〝棚上げ〟して政権樹立を最優先したもので、政権さえ取ってしまえば、あとは時間をかけてその中核を奪取してしまおうというのが究極の狙いだ。今回の新構想も同様で、「食べるにはおいしそうな饅頭(選挙協力)でも、民主党にとっては共産党の伸長を助ける毒饅頭となるだろう」(先の自民党中堅)。

 民主党内の抵抗感を察知した志位委員長は11月7日のテレビ番組で「国民連合政府」構想に関し、「(共産党として)閣内協力でなければいけないとは言っていない。その時の状況に即してベストの選択を取る」と述べ、各党の意向など状況に応じて閣外協力にとどめる可能性に言及した。つまり、閣内協力ではまとまりそうもないと見て取り、ハードルを下げてボールを民主党に再び投げ返したのだ。

 しかし、閣内でも閣外でも、共産党との選挙協力自体が禁じ手である。岡田代表や枝野幸男幹事長ら左派系執行部がそれに気付けるのか否かが問われよう。

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