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強まる自民総裁延長論

強固な基盤で重要課題克服を

北朝鮮、中国に一歩も引くな

 自民党の党則を変更して総裁の任期をさらに3年延長する声が党内で強まっている。安倍晋三総裁の任期はまだ2年あるので、今後、5年間、安倍総裁・首相で行くこともあり得る、というものだ。憲法改正や景気回復など時間のかかる重要課題克服ためには強固な基盤に乗ったリーダーが不可欠である。再び1年ごとに首相が変わるようなことがあってはならない。自民党は「安倍3選」でまとまり、激動する国内外情勢に対処すべきだ。


 「自民党国会議員の多数は安倍さんの任期延長を支持している。とにかく選挙に強く衆院、参院合わせて連続4回の選挙で圧勝だ。政策面でも好調で、敢えて引きずり降ろそうとする方が少数だ」  こう指摘するのは自民党中堅幹部である。7月の参院選では改憲勢力が3分の2を確保し、衆参両院で憲法改正の発議に必要な数が集まった。これは戦後、初めてのことで安倍首相の「志」である憲法改正に向けて大きな一歩を踏み出している。

高い企業収益と株価

 企業収益も戦後最高で、株価は民主党政権時代の約2倍だ。有効求人倍率も高い。核開発や弾道ミサイル実験などで暴走する北朝鮮や南シナ海、東シナ海で覇権を露わにしている中国に対して一歩も引かずに積極的な平和主義外交を展開している。昨年9月に、平和安全法制(安保関連法)を成立させたのも、不穏な極東情勢を踏まえての首相の執念が背景にある。

 「もちろん、消費税再増税など課題がないわけではない。GDPの伸びも足りない。ただ、現状では首相にとってマイナス要因にはなっていない」(同)。自転車事故で入院してしまった谷垣禎一氏に代わって二階俊博氏が幹事長に就任した意味も大きい、と言える。

 総裁経験のある谷垣氏とすれば「ポスト安倍」を狙う筆頭格でもあったが、77歳の二階氏なら今さら欲を出すとは考えにくい。そのうえ、「安倍3選」を真っ先に支持し「安倍首相の後は安倍首相」と言ってはばからない重鎮である。党内に目を配り、反対論者を監視しているはずだ。

3選容認に傾く党執行部

 総裁任期延長を協議する場となるのは「党・政治制度改革実行本部」である。その本部長に就任した高村正彦副総裁は「連続3期9年まで」とする案を披露。古屋圭司選対委員長は多選禁止の撤廃案を唱えている。今月内には協議が始まる予定だが、党執行部の流れは総裁の任期延長容認に傾いている。

 これに対して待ったをかけているのは、ポスト安倍をうかがう石破茂前地方創生担当相だ。9月4日に、記者団に対して「自民党は国会議員だけの政党ではない。党員も含めた党全体の議論の末に結論が出るものだ」と述べ、執行部の動きを牽制した。岸田文雄外相も「時期尚早だ」とし、小泉進次郎党農林部会長も「急いで議論すべきことか」と疑問を呈する形で反対している。

 だが、今から議論をして結論を出しておくことの方が賢明ではないか。2年を切ってくると、多くのマスコミはポスト安倍の動向に関心を示すようになる。つまり、石破、岸田両氏の言動に注目が集まれば集まるほど安倍首相の求心力が衰えを見せ始めるだろうからだ。

 野党も岡田克也民進党代表が「安倍政権の下では改憲論議をしない」と語ったように、安倍氏相手では論戦での勝算を期待できないが、トップが代わるというのであれば俄然、力を得るようになろう。ポスト岡田も同じだ。中国や北朝鮮も、1年余り辛抱すれば他の首相に交代するとなれば、安倍首相との交渉は控えるようになると推察される。それは国益の面から決してプラスとは言えないだろう。

総裁選のハードル

 それに、2年後の9月に総裁選をやらないといっているわけではないのだ。延期反対論の野田聖子氏が「かつてかなり人気のあった小泉純一郎首相ですら任期を守った。安倍首相も任期を守る人だから、必ず18年(2年後)には総裁選をやる」と語ったが、どうも誤解があるようだ。任期の延長とは連続2期6年を3期9年にすることを可能にするということで、3期を務めるためにも総裁選で勝利しなければならないのだ。つまり、2年後の総裁選に安倍首相が出馬することを認めるように党則を変えることを検討しようというのである。

 さらに古屋氏の言う多選禁止の撤廃案は、3期にこだわらず、自民党員の支持さえあればいつまでも総裁を続行できるという提案だ。

 日本の首相は最大6年だが、米国の大統領は8年、中国主席は10年、ロシアの大統領は12年だ。ドイツの場合は、首相の任期は4年だが、任期に制限がないためメルケル首相は12年も就任している。主要国の例を参考にするなら3期9年案も、総裁任期に制限をしない案もどちらでも是とすべきであろう。

野田聖子氏の能天気

 いずれにせよ、2年後には総裁選が行われる。その際、何を訴えるのか、立候補する気概のある実力者たちは国家観や改憲内容、経済再生、安全保障政策など、じっくりと準備をしておくことだ。安倍首相が出ようが出まいが堂々とチャレンジすればいいのだ。ただ、反対のための反対だけは避けねばならない。

 野田氏は昨年、中国の南シナ海の軍事的進出について「日本とは何の関係もない」といった発言をして無知をさらけだした。このレベルで総裁選に出ようとするなどもってのほかだ。ポスト獲得のみに執念を燃やすのではなくポストに相応しい内容をしっかりと養うべきである。

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