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自民総裁選

石破、野田が小泉(進)を担ぐ⁉

新YKK 反安倍で連携か/安倍政権支持率は底打ち

永田町界隈で新たな「YKK」がうごめいている。山崎拓、小泉純一郎、古 賀誠の3氏だ。まるで申し合わせたかのように政権批判の声を強めている。9月 の自民党総裁選を念頭に反安倍勢力にてこ入れしつつ自らの発言力を強めよう という魂胆のようだ。安倍首相は6月 20 日の国会閉幕後に出馬表明をする意向だ が、それを機に総裁選は3カ月におよぶ激戦へと突入する。

 YKKと言えば、かつて次世代を担う リーダーとして注目された山崎拓、小泉 純一郎、加藤紘一の3氏の頭文字をとっ て付けられた名称だ。初当選同期でお互 いに切磋琢磨しながらも経世会打倒〝友 好同盟〟として主流派に対抗。小泉氏だ けが総理の座に就いたものの、山崎氏は 党副総裁を最後にノーバッジとなり、党 幹事長などを歴任した加藤氏は死去した。
 「その加藤のかつての筆頭格の子分で ありながら、2000年の『加藤の乱』 で裏切った元幹事長の古賀誠が加藤に代 わるKとして、党内の安倍『1強』を崩 そうと発信を増やしつつある。小泉純一 郎、山崎拓らと底流で連携している可能 性は十分ある」と政界関係者は指摘する。
 古賀氏は安倍氏とは政治信条が全く違 う。第2次安倍政権発足の翌年、日本共 産党機関紙「赤旗」日曜版1面に写真付 で登場。憲法改正の発議要件を緩和する 安倍内閣の憲法 96 条改定の動きについて 「絶対にやるべきではない」と反対を表 明、保守派を驚かせた。最近も「首相は 改憲ありきだ。憲法9条は一字一句変え ない決意が必要だ」と首相の改憲路線に 水を浴びせている。
 これに連動するかのように、「自民党 のいいところは多様性だが今は単色」と 安倍批判を続けるのが山崎拓元自民党副 総裁だ。山崎氏は財務省の公文書改ざん問題について「財務相が辞める以外に責 任のとり方はない」と麻生辞任を主張し ている。もちろん麻生氏が安倍政権の屋 台骨であることは百も承知の上での発言 だ。
 小泉元首相による反安倍の言動も露骨 だ。首相在任時、小泉氏は安倍氏を官房 長官や幹事長などで重用。安倍氏も中曽 根康弘元首相に対する終身比例代表の約 束を反故にするため小泉氏の使いとして 中曽根氏の元に出向くなどの忠誠で応え た間柄だ。それが5年ほど前から原子力 発電所の再稼動に関する立場の違いによ り距離ができるようになった。
 「小泉さんは安倍さんに総理としての 在職日数を抜かれた。安倍さんはいま、 佐藤栄作、吉田茂に続く戦後第三位とな った。秋の総裁選に3選すれば、来年中 にも伊藤博文、桂太郎を抜いて内閣制度 始まって以来の歴代一位に躍り出てしま う。それをひがんでいるのではないか」 と自民党幹部は推測する。師匠が弟子に 追い越されることが安倍にクレームをつ ける要因というのだが、それだけではあ るまい。
 「息子の進次郎に期待しながら、新た な政権をつくるための仕掛けをしている 可能性もある。進次郎政権を思い描いて いるのかもしれない」と指摘するのは自 民党中堅だ。
 小泉元首相が5月 23 日、新潟県知事選 (6月 10 日投開票)で野党5党が支援す る候補者と面会し、「新潟は原発がある んだから、直ちに廃炉。そういう候補に 当選してもらいたい」と語ったが、これ は東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に慎重 な立場の野党候補者を事実上応援する立 場を明らかにしたものだ。3選を目指す 安倍首相としては総裁選直前の選挙だけ に負けるわけにはいかない。総裁まで務 めた元首相がわざわざ新潟を訪れて野党 候補と面会し握手をして反原発の講演を したことは、安倍降ろしにつながる事実 上の「反党行為」だ。
 しかも財務省の文書改ざんが発覚した 際、安倍首相や麻生財務相が佐川宣寿 氏を国税庁長官に起用したことについ て「適材適所と言い切った。これにはあきれた」と正面から首相を批判するよう になった。最近はさらに「(安倍首相の) 3選は難しい。信頼がなくなってきた。 何を言っても言い逃れ。言い訳と取られ ている」とボルテージを上げている。進 次郎氏も「すべての権力は腐敗する」と 語った。親子そろっての政権批判である。  4月 26 日に開催された自民党女性局主 催の第一回女性未来塾。そこで進次郎氏 は「総裁選で次は誰かとよく言われるが、 もうそういう時代じゃない。『誰か』で はなく、次は『どのチームか』という時 代だ」と語ったが、「その意味を紐解く ことが派閥にとらわれない進次郎の構想 を探るヒントになろう」と別の政界関係 者は指摘する。同氏によると、その「チ ーム」こそYKKがうごめいて形成しつ つあるものだ。反安倍の最右翼の石破茂 元幹事長、古賀氏を後ろ盾にしながら女 性活躍の先頭に立ちセクハラ問題への対 処で求心力を持ちつつある野田聖子総務 相らが、世論調査で「党総裁に最もふさ わしい人物」として安倍首相を抜いてト ップに躍り出た進次郎氏を担ぐ可能性も あるという。そうなれば党規則改正で国 会議員票(405)と同数に増えた地方 票の獲得に不安が残る首相にとって強敵 出現となる。
 首相は現在、出馬を明言していない。 だが、5月 22 日夜に開催された首相出身 派閥の細田派パーティーでは細田博之会 長が安倍3選で結束するよう呼び掛け た。各種世論調査の数字も好調だ。時事 通信は前月比がほぼ横ばいの 38 ・1%。 NHKは、 38 %で前回と変わらなかった が、不支持率が1ポイント減少し 44 %。 共同通信は支持率は1・9ポイント増の 38 ・9%で不支持率も減った。産経新聞 とFNN(フジニュースネットワーク) の合同調査では、前月比1・5ポイント 増の 39 ・8%と底を打った感じである。  このまま推移していけば、安倍「1強」 体制は衰えず3選の可能性が大きい。こ れに対してYKKのノーバッジ3人組が 新たな仕掛けをするのか。小泉親子が連 携して倒閣運動を表面化させるのか。進 次郎氏の言う「チーム」がどう形成され るのか。総裁選の見所は多い。

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