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霞ヶ関ファイル

上川陽子法相 記者会見5・18

旧優生保護法に関する質疑について 今朝の閣議では、法務省案件はありま せんでした。  本月 15 日付けで、法務省における証拠 に基づく政策立案、いわゆるEBPM (Evidence-Based Policymaking)を推進 するため、大臣官房政策立案総括審議官 を座長とするEBPM推進プロジェクト チームを立ち上げました。
 EBPMに関しては、昨年5月の「統 計改革推進会議最終取りまとめ」におい て、各府省の政策部門を中心として統計 等のエビデンスを積極的に利用し、EB PMを推進することが必要であると指摘 されたところです。
 これを受け、法務省においても、本年 度から政策立案総括審議官を新たに設置 したところですが、EBPMをより加速 度的に推進するため、本プロジェクトチ ームを立ち上げた次第です。
 今後、本プロジェクトチームにおいて、 本年度の取組方針を策定した上で、EB PMの基盤となる各部局が保有する統計 等データについて、一元的に把握すると ともに、その内容等について必要な見直 しを行った上での積極的な利活用など、 取組方針に基づく取組のための具体的な 方策について検討していく予定です。
 なお、本プロジェクトチームにおける 検討結果については、可能な限り平成 31 年度予算概算要求に反映させるととも に、本年末を目途に政府のEBPM推進 委員会に報告することを考えています。

【記者】
昨日、「旧優生保護法のもとで不 妊手術を強制された」などとして、北海 道、宮城県、東京都の3人が国に賠償を 求める訴訟を起こしました。原告側は憲 法に違反しているほか、国が長年にわた って被害救済措置をとらなかったと主張 しています。これに対する大臣の受け止 めをお願いします。
 また、この問題に関連して、超党派の議 連が発足しました。救済策について、議 員立法化を目指していますが、これにつ いての大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】
御指摘の訴訟提起の報道につい ては承知していますが、お尋ねの事柄は、 現在係属中の訴訟の対応に関する事柄で すので、お答えについては差し控えます。
 また、議員立法については、国会にお いて判断されるべき事柄であり、法務大 臣としては、お答えは差し控えます。

【記者】
本年度の司法試験の受験者数が、 昨年度に比べて減少傾向にあったと思い ますが、今後の法曹養成の在り方について、所感をお聞かせください。

【大臣】
政府の法曹養成制度改革推進会 議では、法曹志望者数の回復に向けた取 組として、法科大学院の改革、法曹有資 格者の活動領域の拡大、さらに、司法試 験の在り方の検討等の取組を進めるとさ れました。
 法務省においては、この推進会議決定 に基づき、現在、文部科学省に設置され た中央教育審議会法科大学院等特別委員 会に、担当者が参加して法科大学院改革 について検討を行い、あるいは、関係省 庁及び関係機関とともに、法曹有資格者 の活動領域の拡大に向けた協議を行うな どの取組を進めています。
 今後とも、有為な人材が法曹を志望 し、質・量ともに豊かな法曹が輩出され るよう、文部科学省と連携し、他の関係 機関等の協力も得ながら、必要な取組を しっかりと進めてまいりたいと考えてい ます。

【記者】
成人年齢を引き下げる民法の改 正案についてお伺いします。
 今ちょうど衆議院法務委員会で審議が 行われている中で、大臣の少し前の御答 弁で「世論調査を行いたい、検討したい。」 という趣旨の御答弁がありましたが、そ の世論調査について、いつやるのか、ど ういう形で行うのか等の詳細をお伺いし ます。

【大臣】
成年年齢の引下げですが、平成 25 年の世論調査を基に今国会の中で審議 していただいています。この間でき得る 限りの環境整備を尽くし、今審議をお願 いしているところです。
 私が答弁を行った世論調査の内容は、 国民への浸透度を測る調査ということで す。これは、この民法改正法案が成立し た場合、その施行に向けて、成年年齢引 下げの意義、あるいは環境整備の施策の 内容等について、国民に十分に御理解い ただくことが重要であると考えており、 成年年齢引下げに関連して生ずる様々な 影響の把握、そうした事項に関する理解 がどの程度国民に浸透しているかを調査 したいということで申し上げたところで す。改正案が成立した場合、施行の段階 において、こうした浸透度の調査の結果 を、更なる環境整備の施策の充実、ある いは効率的な、また、効果的な周知をど のようにするかに反映させ、国民の理解 が進むよう、しっかりと努力してまいり たいと思っています。

【記者】
松山刑務所大井造船作業場の逃 走事故について、検討委員会が引き続き 開催されていると思いますが、現状どの 程度まで進展しているのかお教えくださ い。

【大臣】
4月9日に立ち上げた「松山刑 務所大井造船作業場からの逃走事故を契 機とした開放的施設における保安警備・ 処遇検討委員会」は、これまで4月 11 日 に第1回、 19 日に第2回、 26 日に第3回、 5月7日に第4回、そして昨日、第5回 を開催したところです。  昨日の第5回の委員会においては、大 井造船作業場における保安・警備体制や 逃走事故の再発防止等の内容等について 検討したと報告を受けています。  いずれにしても、再発防止対策と、全 国にある開放的施設の在り方について検 討していくというのがこの委員会の趣旨 ですので、委員会を頻繁に開催し、しっ かりとした検討が出来るよう、引き続き 努力してまいりたいと思います。


記者コラム
強制不妊手術訴訟、優生思想から脱却したのか
旧優生保護法に基づき、障害者らが不 妊手術を強制させられた問題で、国に損 害賠償を求める訴訟が相次いで起こされ た。焦点は、救済措置を怠っていた国の 責任だが、より本質的問題は、マスコミ も含め社会全体が長い間、優性思想を容 認してきたという実態である。これを契 機に、障害者の人権はもとより、生命の 尊厳についての日本人の認識を問い直す 必要がある。
 同法は194 8年、議員立法 で制定されたも のだ。「優生上の見地から不良な子孫の 出生を防止し、母性の生命健康を保護す ること」を目的に、遺伝性とされた病気 のほか、知的障害者らに、本人の同意な しでも不妊手術を行えることなどを定め た。医師が診断し、民生委員らからなる 都道府県の優生保護審査会で手術をする かどうかを決定。手術費用は国が負担し、 これまでに本心の同意不要の不妊手術を 受けたのは男女で約1万6500人に上 る。ハンセン病など、同意のあったケー スも含めると、2万5000人近くにな る。
 同法は96 年、差別的な規定を撤廃した 「母体保護法」に改正されたが、 98 年に は、国連の人権規約委員会が強制不妊手 術の対象者に法律で補償を受ける権利を 規定するよう勧告するに至っている。現 在の人権感覚からすると、旧優生保護法 のような差別的な法律が存在したことに 驚きを禁じえないが、遺伝性の病気や傷 害を持った子孫は絶やすべきだとする優 生思想が最近まではびこっていたのは事 実。ナチス・ドイツにもその影響があっ たとされる。
 わが国では、人口抑制などの課題も重 なって、同法が制定されたのだが、問題 視され出したのは最近になってからで、 それまでは取り上げるメディアもほとん どなかった。やっと当事者やその家族ら が声を上げたことから、救済に向け動き 出したのだ。
 しかし、救済措置がとられ、障害者の 「生む権利」が保障されたとしても、不 幸はなくならない。社会に根強く残る差 別意識をなくし、障害者が子供を育てる 環境を整えることも必須である。そして、 この社会が優生思想から脱却するには、 迂遠ではあるが、 生命の尊厳という 重い課題に1人ひ とりが向き合うこ と以外に方法はない。
 生命の尊厳の観点からすると、これに 逆行する事態が進んでいる。妊婦の血液 から胎児の病気を調べる「新型出生前診 断」で、染色体異常が確定した妊婦の9割 以上が人工妊娠中絶を選んでいる。
 日本産科婦人科学会はこの診断を拡大 する方針だが、そうなれば中絶が増える のは確実だ。この動きにブレーキをかけ ようとの声が弱いのが気になる。

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