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410兆円の巨大ビジネス「金融サービサー」の暗闇

「銀行の貸し手責任を問う会」が問題提起

不良債権回収業の過酷でむごい実態を明らかにした会合が先日、中央大学駿河 台記念館で開かれた。「金融サービサーについて」をテーマにした会合で、「銀行 の貸し手責任を問う会」が主催した。同会事務局長の椎名麻紗枝・弁護士は、基 調報告で以下のことを問題提起した。

「金融サービサー」とは聞こえはいい が、実態は債権回収業だ。  従来、債権回収業務には暴力団など反 社会的勢力が入り込みがちなため、弁護 士以外の債権回収はできないと弁護士法 の 72 条、 73 条にある。
 それがバブル崩壊後、金融機関が抱え る大量の不良債権の処理が進まないた め、迅速処理の名のもとに、弁護士法の 特例として1998年 10 月に「債権管理 回収業に関する特別措置法(金融サービ サー法)」が制定された。
 なぜ、金融サービサー法が作られたの か。
 銀行はバブル時、どんどん貸し込み、 それが結果的には不良債権化し膨大な不 良債権を生み出した。  だが日本は不良債権を表に出すことは いやだった。表に出せば銀行の責任が問 われてくるし、大蔵省が不良債権を容認 したということにもなって、大蔵省の責 任も問われてくることにもなりかねな い。
 そこで考えたのが、共同債権買取機構 だった。不良債権をごっそり買取機構に 移すというものだ。
 基本的な考え方は5年以内に処理する というものだった。それが出来なかった 時に、元の債権者である銀行に移すとい うことだった。
 しかし、ほとんどの不良債権は5年間、 市場には全く放出されないまま塩漬けにされた後、銀行に戻ってきた。
 不良債権はビジネスとしてうまいビジ ネスだ。そこに目を着けたのが、アメリ カだ。 40 兆円のビジネスになると見て、 不良債権を市場に放出しろと強く迫った 経緯がある。
 結局、1998年 10 月に金融サービサ ー法は制定されることになる。
 同法施行後、法務大臣の許可を受けた サービサーは120社を超えた。法施行 時の取り扱い件数は、 15 万件だったが、 現在は1億5899万件を超え、取り扱 い債権額も410兆 円を超えるまでの巨 大ビジネスに成長し た。
 不良債権回収がど うしてこれほどの儲 けを出すビジネスに なるのか。
 その最大の理由 は、貸金業の場合、 回収には「金利制限」 があるが、サービサ ーの投下資本の回収 には、一切の法的制限がないからだ。
 仮に、サービサーが1億円の債権を1 万円で買い取って、債権額の1割を回収 しても、投下資本の1000倍を回収で きたことになる。
 当然、このような巨額な回収を図る裏 には、債務者、とりわけ連帯保証人から の過酷な取立てあるからに他ならない。
 かつて、サラ金地獄、商工ローン地獄 がいわれ、大きな社会問題になったが、 金融サービサーもそうした実態がある。
 なお、破綻金融機関からの不良債権等 の買取りや回収などを目的として発足し た整理回収機構(RCC)というのは、 預金保険機構が全株をもっている公的な 機関だが、彼等は株式会社という形をと っていて、都合のいいときは民間の会社 だと言い、都合が悪くなると公的な機関 だと、民間と公的を使い分ける二面性を もった会社だ。  
 初代社長は中坊公平氏だ。私は「銀行 の貸し手責任を問う会」主催の集会で、 久保亘元大蔵大臣と中坊公平RCC社長 を呼びビッグ対談を行なったことがあ る。
 私が過酷な債権回収を危惧しているこ とを述べると、中坊氏は「悪質な債務者 と良心的な債務者をきちんと区別してお り、血も涙もある回収をする」ときっぱ り返答してくれた。
 それで、私は安心した。
 だが、その後でやっていることが全然 違った。
 私は整理回収機構に乗り込んで、「あ なた方のやっていることと中坊氏の言っ てることは違う」と抗議した。
 すると、担当職員が何と言ったか。 「うちの社長は二枚舌を使う」とけろ りと言ってのけた。
 まだ中坊氏は、社長を辞めていなかっ たにも関わらずだ。

 なお、銀行の貸し手責任を問う会では、 こうした悲劇をなくすため、「債権回収額の上限規制」や「連帯保証人の保護」 などの提言を行っている。
 「債権回収額の上限規制」では、サー ビサーの回収上限を規制することで「暴 利所為」を止めさせる法律制定を求めて いる。
 また連帯保証人に対する身ぐるみをはがす回収強行で、その生活を脅かすよう な行為を止めさせる必要もある。
 そもそも連帯保証人は、融資契約によ って何ら対価を得ていない。
 にもかかわらず、債務者が返済できな かった場合、その返済の責任だけ負わさ れる。本来、債権回収のリスクは貸し手 である金融機関が負うべ きであるのに、連帯保証は 回収リスクを連帯保証人 に負わせる不理尽なもの だ。
 金融庁は、連帯保証人に 対する回収では、連帯保証 人の生活を脅かさない回 収を心がけることをガイ ドラインに掲げている。
 連帯保証人の生活を脅 かさない回収とは、自宅や 給与の差し押さえ、売掛金 の差し押さえなどが当た るはずだが、これらのこと をガイドラインではっき り明示すべきだというの が同会の主張だ。

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