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農地集積を阻害する不在地主 相続未登記で多い法定相続人

農地が放置されると、やがて野草や蔦 に覆われ荒野に様変わりしてしまうが、 意図的でない荒れ方もある。

 戦後、条件の悪い農地は売却すること ができないまま、杉など成長の速い樹木 が植えられることが多かった。だが杉は、 周囲の農地を日陰にして農村の活力をそ ぎ落とした。

 都会に 出て行っ た離村者 による不 在地主の 農地や家 屋敷が処 分されな いまま放 置され、 農道整備 など公共事業の足かせになった。さらに、村と不 在地主の土地所有権との間で衝突が起き ることもまれではなかった。

 この不在地主が行方不明になれば、事 態はさらに困窮を極めた。

 現在、国際的競争力のある農業や農村 の再活性化が求められる中、農地集積は 喫緊の課題となっている。 この農地集積を阻む壁になっているの が、不在地主や所有者不明農地の存在だ。

 耕作可能な農地があり、能力と意欲が ある農業の新たな担い手が存在しなが ら、スムースな貸与や利用権設定が行な われないために、みすみす農業活性化の チャンスの芽が摘み取られている。10 年ほど前のデータながら、全国農業 会議所による調査結果が参考になる。

 この調査によれば、1397の農業委 員会のうち、 22 ・3%にあたる311農 業委員会で、不在地主の存在により農地の貸借契約を締結することができなかっ たとされている。今から 10 年ほど前でも、 全国の4分の1弱でこうした問題が発生 していたのだ。

 ただ不在地主であっても、連絡が取れ れば説得のしようがある。しかし、それ もできないまま利用権設定ができなかっ た農業委員会が半数以上を占めてもい た。

 「不在農地所有者に住所等が不明で連 絡をとることができなかった」が 50 ・8 %、「相続登記がされていないため権利 関係者の数が多くて同意を集められなか った」が 54 ・0%となっている。

 前者は名義上の所有者は分かっている ものの、行方不明で連絡が取れないとい う所有者不明問題だ。また後者は、相続 未登記問題で相続登記がされていないた め権利を有する法定相続人が莫大な数に のぼって実務処理できないという問題 だ。農地の貸借契約を締結するためには、 原則として権利者全員からの許可が必要 だが、実際には難しく、雑草や蔦に覆わ れた農地のように、身動きが取れないの だ。

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