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正念場迎える米中貿易摩擦問題 知財を合弁企業使い吸い取る中国

米中貿易摩擦問題を処理するため、中 国側代表団を率いた劉鶴副首相は5月 19 日に「双方が貿易戦争をせず、お互いに 追加関税をかけ合うことはしないとの認 識で一致した」と語った。ただ、具体的 な対米輸出削減額の言及もなければ、米 通商法301条による制裁を米国が取り 下げたわけでもなく、簡単には米中貿易 摩擦の火種は消せそうにない。

 思い起こすと1930年代に、保護貿 易主義を強要した米国の悪例がある。

 1930年にフーヴァー大統領の下、 スムート・ホーリー法が策定され、高関 税政策が立法化された。これでペンシル バニアの鉄鋼業者などは一息つけるは ずだったが、実際にはこれで世界全体が 年々、貿易縮小を伴うデフレスパイラル に陥り、世界大恐慌に落ちていった。

 ただ、現在のトランプ政権のやり方が、 それほどの強い影響力を持つかというとそれほどでもない。

 一番の大きな違いは、米財界が経済的 見通しに強い自信を持っていることだ。

 しかも米経済はサービス産業化が進ん でおり、工業製品は基本的に輸入に委ね ざるを得ないという冷厳な事実がある。 保護貿易主義で高関税による障壁を張り 巡らし、米に製品やモノが入ってこなく なれば、米経済の循環は止まってしまう。

 そういう意味では、米国とすれば高関 税も301条も、相手を限定して使わざ るを得ず、1930年代の保護貿易主義 で世界経済が委縮してしまった失敗の轍 を踏むようなことは起きないだろう。

 それでも世界貿易の自由の旗を、これ まで振ってきた米国が、並みの国になっ てしまったという感慨はある。

 米国がとりわけ苛立っているのは、知 的所有権に対する中国の姿勢だ。中国が 念願の世界貿易機関(WTO)加盟を果たしたのは西暦2000年だった。欧米 諸国は、それによって中国が国内市場を 開明的なものにすると思ったが、期待倒 れに終わってしまった。米企業が高い技 術を中国の合弁先に提供すると、決まっ て合弁企業の親企業が無断で、しかもた だで使ってきたのだ。

 それはおかしいだろうというのが米国 の本音だ。 13 億人の巨大市場を擁する中 国は、西側企業にとって垂涎の的だ。そ うした弱みをバーゲニングパワーに使っ て、やりたい放題をしてきたのが中国企 業だ。

 いわば合弁企業をトンネル企業として 技術を吸い取り、親企業が大儲けする。  これに対し、米政府が立ち向かってい る側面がある。

 ただ米国の主張を全面的に受け入れる と、中国の民間設備投資を下押しするこ とにつながる。要するに、中国で作って 外に輸出するというのが持続可能なもの なのかという疑問を中国人も、あるいは 中国に直接投資してきた海外企業も考え ざるを得なくなってくるのだ。中国にと って、本当に頭が痛いのはこの点だ。

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