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帝国ホテルでブータン首相夫妻の歓迎会

トブゲイ首相
官民上げて日本の進出要請

ブータン王国から来日したトブゲイ首 相夫妻の歓迎会が4月 10 日、帝国ホテル で開催され外交官や学者、ビジネスマン など約150人が集った。主催は在東京 ブータン名誉総領事館、在大阪ブ ータン名誉領事館、在鹿児島ブー タン名誉領事館、日本ブータン友 好協会。日本ブータン学会、日本 GNH学会、ブータンミュージアムなど が共催した。

転換点となった2011年
 まず主催者代表として挨拶に立ったブ ータン王国名誉総領事の徳田ひとみ氏は 「私が名誉総領事になった当初、多くの 人たちは『ブータンってどこにあるの、 どんな国なの?』って感じだった。東日 本大震災に見舞われた2011年、ワン チュク国王王妃両陛下が日本をご訪問さ れた。両陛下は被災地の方々を慰問され 子供達に龍の話などをされ、悲しい経験 を乗り越えるよう励まされた。また、ワ ンチュク国王の国会演説は、日本人とし ての誇りを我々に取り戻させるものであ った。これを機に日本のほとんどの人々 が、ブータンを知るようになった。
ブータンは地理的には遠い国だが、心 は寄り添い、とても日本と近い国だ。遠 くヒマラヤの麓からお越しいただいた皆 さまと、これからもっと深い絆で結ばれ、 このひと時が心暖まるなごやかな会にな り、ますます日本とブータンの友好関係 が進むよう願います」と述べた。
 来賓挨拶で、在ブータン日本国特命全 権大使の平松賢司氏は「普段はインドに いますが、できるだけ多く訪問したいと トブゲイ首相に誓って以来、ブータン訪 問は 10 回を数える。それまでにも秋篠宮 殿下御夫妻の長女眞子殿下ご訪問など、 お互いの 交流が深 まってい ることを 実感して いる。
 これま で以上に ブータン の発展に 協力して いくため にも、農業や保健衛生などさまざまな分 野で、一方的なことではなくお互いが協 力し合う関係になることが大事だと思 う。
 今回は首脳会談や外相会談があるが、 そこで決まったことを一生懸命、フォロ ーアップしたいと思っている。  私はブータンが大好きだ。行くたびに 心が和むし、非常に暖かい歓迎を受ける。 これからも時間のある限り、ブータンを 訪問したい。また、今後ともブータンと の関係を深めていきたい」と語った。

大胆な経済改革必要
 主賓のトブゲイ首相は「ブータンは神 聖で巨大なヒマラヤ山脈にある小さな国 で、日本は広大な太平洋にある先進国だ が、両国は深い友情に結ばれていること を嬉しく思っている。両国関係は相互理 解と尊敬の念によって年々、強化されて いる。とりわけ、日本の皇室とブータン の王室の強い絆が、両国関係の発展を約 束する強固な礎となっている。日本の協 力は農業、衛生保健、人材育成、情報技術、 地方開発など多岐にわたり、ブータン国 民の生活に多大な貢献をしている。日本 の協力がなければ、今日のブータンの発 展はなかった」と感謝の念を述べるとと もに「今回の訪日目的は、こうしたブー タンに対する日本の貢献に対し、深い感 謝の念を表すためだ」と語った。
 またトブゲイ首相は、次期5カ年計画 に触れ「ブータンは発展はしたものの、 高度な発展レベルに到達するには、まだ まだ時間がかかる。経済力は小さく、生 産レベルも低い。ブータン国民の生活を 向上させるには、大胆な経済改革が必要 だ。そのためには次期5カ年計画で、多 様性に基づいた生産力増強を可能にする 経済構築に目を向ける必要がある。これ を実現するために、日本と多方面での協 力関係が必要になる」と述べた上で「目 標を実現するためには、観光や農林業を はじめ車両のパーツ生産など多様な日本 との協力体制が望まれる」と官民上げた 日本の進出を要請した。
 さらにトブゲイ首相は「多くのブータ ンの若者が日本に留学に来て勉強し、ま た仕事にも就いているが、ただ、職を得 るだけでなく、多くの技術を取得し、また日本の伝統文化に触れ、仕事に対する 倫理観などを学んでいる」と、世界で初 めて国の発展を図る指針として、GNP (国民総生産)ではなくGNH(国民幸 福量)を取り入れた国らしい精神的側面 を強調した。
 歓迎会は日本ブータン友好協会会長の 小島誠二氏が「乾杯」の音頭を執り、杯 を交わしながら和やかな宴が続いた。ト ブゲイ首相はすべてのテーブルを回りな がら、参加者と言葉を交わした。  また、在大阪ブータン名誉領事の辻卓 史氏(鴻池運輸会長)、在鹿児島ブータ ン名誉領事の永田良一氏(新日本科学社 長)、ブータン王国首相特別顧問のペマ・ ギャルポ氏らが挨拶した。

安倍首相とトブケイ首相の会談
 トブゲイ首相は4月 11 日に安倍晋三首 相と両国首脳会談を行い、同夜、総理大 臣公邸で晩餐会の主賓に招かれた。  晩餐会で安倍首相は、次のように挨拶 した。
 「日本とブータンとの関係は世界で最 も暖かく親しみに満ちたものだ。両国民 は友好の絆で結ばれている。私自身、ト ブゲイ首相の趣味がアーチェリーという ふうに伺った。学生時代に実は私はアー チェリー部の一員で、大変親近感を抱い ている。一度機会があれば、ぜひトブゲ イ首相とアーチェリーで競い合いたいも のだが、しかし、私は日本のアーチェリ ー連盟の会長であり、私の実力が明らか になることは避けたいと思っている」と 言って笑わせた後、「日本とブータンの こうした友好関係は、両国の人々の行動 と献身によって裏打ちされてきた。ブー タンの農業開発に尽力し、その献身と誠 実さで信頼を集めたダショー西岡氏がそ の一人だ。共に歩んでこられた西岡里子 令夫人に本日はお越しいただいた。
 東日本大震災の年、ワンチュク国王王 妃両陛下に日本を訪問いただき、被災地 の方々を始め多くの日本国民を励まし勇 気づけていただいた。本日は、当時小学 生であった後藤香純さんと阿部開斗さん にお越しいただいた。お2人とも、苦し い時を乗り越え立派に成長された。被災 地は力強く復興しており、明日、訪問さ れるトブゲイ首相御自身の目で見ていた だきたいと思う」と続け「タシ・デレ。 乾杯」と杯を上げ音頭を取った。
 一方、トブゲイ首相は日本による暖か いおもてなしへの感謝と、これまでの日 本からの幅広い分野における経済協力に 対して深い謝意を表し、「後発開発途上 国(LDC)からの卒業を目指し、第 12 次5カ年計画が本年7月から開始される ので、日本からの支援を期待する」と述 べた。
 さらにトブゲイ首相は「日本が国際社 会の平和と繁栄に向けてリーダーシップ をとっていることに敬意を表したい。日 本は国際社会の平和と安定に貢献する能 力を有しており、国連安全保障理事会常 任理事国入りを支持する」と述べた。

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